亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

能勢町

2019年2月11日

金銀の美しい クモに見とれて…

「きれいなクモやなあ…ありゃりゃ」(イラスト(C)合間太郎)

 妖怪になる虫の中で怖いのは、クモがダントツ1位と思う。実際には益虫のクモもいて、人間に害を及ぼすばかりではないが、なにせ見た目が気持ち悪い(クモ大好きという人、ごめんなさい)。

 今回は、クモに不思議な糸をかけられた能勢の猟師の話。

 ある日、猟師がキジを追って山の奥まで入って行った。追いついては逃げられしながら、キジはとうとうどこかに行ってしまった。仕方なく古池のそばで休んでいると、池の中からまだらのクモがピョンと現れた。それがまた金や銀に輝く美しいクモで、思わず見とれていると、スルスルとひざに乗り、ササササと胸のところまで上がってきた。そうしてピューッと猟師に糸を吹きかけてくる。あまりのテンポの良さと美しい赤、青、黄の糸に見とれてしまい、気づいたときにはクモはもう、どこかに消えてしまった。

 うす暗い古池のそばで、クモの不思議さがだんだんと恐ろしさに変わってきて、ネバネバしたクモの糸をはずしては、となりにあったツツジの木になすりつけていく。そしてようやく全部ツツジの木にぬりたくったところで、池の底からうなるような声が聞こえてきた。

 「うーんしょ、うーんしょ、うんとこどっこい、うーんしょ」

 その地面の底から響いてくるような声が池にさざ波をたてると、クモの糸がピーンと引っ張られ、ツツジの木が根っこからメリメリと倒れた。そして池の中へとズルズル、すごい力で引き込まれてしまったのだ。

 このような恐ろしい怪物もいれば、美しい女郎グモのようなものもいる。そして、たいていの人はクモに食べられたり、生き血を吸われたりする。そのうえ本体が虫なので、話がうまく通じないのもこまりもの。会いたくない妖怪ナンバーワンかも。 (日本妖怪研究所所長)


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