亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

ヒドラ(ギリシャ)

2019年9月10日

ヘラクレスが退治した不死の蛇

「首がうじゃうじゃ、再生するヒドラ」(イラスト(C)合間太郎)

 ヘラクレスはギリシャ神話最強の戦士で、大神ゼウスと美しいアルクメネの間の子である。アルクメネには結婚を約束したアムピトリュオンがあったが、彼が戦場へ行っている間にゼウスがアムピトリュオンに化けて交わった。しかし、この夫婦は大神ゼウスの子と知って大切に育て、子どもはギリシャきっての豪傑ヘラクレスへと成長する。

 ゼウスはこのようにいろんな所で子どもをつくるのだが、ただの好色と考えるのはまちがいで、神の恵みと思ってもらいたい。神の恵みにより勇者ヘラクレスが誕生し、各所にはびこる悪人や怪物を退治して、人々の不幸を救うからである。

 しかし、ゼウスの妻ヘラは嫉妬してヘラクレスに呪いをかけ、彼を狂わせて自らの手で妻子を殺させる。その後、下劣で臆病で意地悪なエウリュステウス王の命令で、12の苦難の旅へ向かわせるのもヘラの策略である。

 さて、その王の命令で退治する怪物のうちヒドラは2番目で、レルネという沼にすむ九つの頭を持つ不死身の蛇だ。首を切っても二つに頭が増えるので、ヘラクレスのおいイオラオスにたいまつを持たせ、切ったらすぐに切り口を焼かせると首は再生しなくなった。でも、最後に残った首が強力な不死の能力を持っており、しかもヒドラを助けようと、大ガニも寄ってくる。これもヘラのしわざである。しかし、カニはヘラクレスがふんづけて、あっさりやられてしまう。最後は巨大な岩を上から落とされ、怪物はついに動かなくなった。

 このヒドラと大ガニは、ヘラクレスとともに春の夜空に輝く星座、ヘラクレス座、うみへび座、カニ座となる。ヒドラのすむ沼、レルネはペロポネソス半島の東にあったようだ。そこは広大な湿地帯だったようで、いくら干拓しても次々と水がわいてくる様は、首を落としても再生するヒドラのようである。今はもうそんな風景は見られないと思うが、ヘラクレスの有名な12の冒険譚(たん)だけでも、いずれ現地に行って確認したいと思う。

 (日本妖怪研究所所長)



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