亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

ゴブリン(ヨーロッパ全域)

2019年10月7日

チョコマカ動く、小妖精の集団

「ひひひ、悪い子はおらんかな」(イラスト(C)合間太郎)

 クリスティナ・ロセッティの1862年の著作に『ゴブリン・マーケット』(レベル刊)というのがある。ゴブリンの売っている果実を食べるとそのとりこになってしまい、もっと欲しいと思うがゴブリンは二度と売ってくれない。そうすると体がどんどん衰弱して、ついには死に至るというもの。

 ゴブリンは集団で行動することが多く、ここでも主人公のリジーに、よってたかって果実を食べさせようとする。映画の「ハリー・ポッター」では、大勢のゴブリンが銀行員として走り回っている姿が見え、ゲームやマンガでは、あまり強くない「ざこキャラ」として登場していると思う。妖精や小悪魔の仲間としてなら、一般の家庭で最も親しまれているのかもしれない。

 キリスト教がヨーロッパで勢力を拡大していくにつれ、民間伝承の神や精霊が悪魔化していった。キリスト教は一神教ゆえに、他の宗教の神や精霊は邪教の悪魔になるのである。ゴブリンもそのような中で、家庭をおびやかす魔物にされたふしがある。子どもに「早く寝ないとゴブリンが来るよ」というふうに。元はひょっとしたら美しい妖精だったのかもしれない。今では邪悪な地霊で、背丈は人のひざぐらいまで。地下世界で悪だくみを企て、始終チョコマカ動き回っている。

 スピルバーグの映画「E.T.」で、かわいいとも気持ち悪いとも言われた宇宙人の子に対して、少年のセリフが「ゴブリン?」であったことが、この妖精の知名度をもの語り、親しみや恐れの感情を表していると思う。映画自体は好きじゃなかったけど、その唐突に出てくるセリフを西洋社会の誰もが「何?」って思うことなく、すんなり受け入れていることに興味を持つ。ゴブリンの容貌を西洋の観客の誰もが知っているのだからおもしろいよね。

(日本妖怪研究所所長)


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