亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

バジリスク(アフリカ・ヨーロッパ全域)

2019年11月4日

古代から続く毒蛇の系譜

「姿は鶏みたいだけど、蛇の王なんですよ〜」(イラスト(C)合間太郎)

 ハリー・ポッターのシリーズ2作目『ハリー・ポッターと秘密の部屋』に登場する怪物「バジリスク」。「われらの世界を破壊する怪獣で、最も恐るべきはバジリスク。この巨大な蛇のひとにらみは命取りになる」というせりふが映画の中にある。たしかに他の伝説でも、バジリスクは人や獣をひとにらみで殺す邪眼を持っている。

 古くは『旧約聖書』の「エレミヤ書」の中に、ちゃんと「basiliscus」という毒蛇として出てくるから、そのへんのマムシとは格が違う。蛇を神様として祀(まつ)る日本人にはピンとこないかもしれないが、聖書の世界で蛇は悪魔と同じ扱いなのだ。

 とにかくバジリスクの歴史は古くて長い。77年に古代ローマの学者プリニウスが著した『博物誌』には、蛇の尻尾を持つ鶏のような姿で登場し、1642年に出版されたアンドロヴァンディの『怪物誌』には、8本の足を持つズングリとした蛇として描かれている。

 バジリスクは時代とともに姿も特徴も加えられたり変化したりしていて、ひとにらみで人を殺したり、石に変えたりできることから、ペルセウスがメデューサの首を持って移動しているときに逃げ出した1匹の蛇が成長した、という話もある。姿勢を正し、胸を立てて前進することからコブラと同一視され、そこから鶏に形が変化して…と、よく考えたら、これって嫌われているというより「バジリスクをネタに、みんなで楽しんでるんじゃないの」と言いたくなる。現にバジリスクを団体の紋章にしているところもあるくらいだ。

 知り合いの造形師が「天使は一体造ったら終わりだけど、悪魔はいくらでも造れる」と言っていた。そうです。創作のテーマとしては、天使より悪魔の方がおもしろいのです。これからの人類史上、バジリスクはまだまだ変化していくかもしれません。クリエーターの皆さま、歴史に残る21世紀スタンダード・バジリスクに挑戦してみてはいかがでしょうか。

 (日本妖怪研究所所長)



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