亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

ルシファー(イスラエル、他)

2019年11月18日

サタンとは天上界の役職名?

「元光の天使、悪魔王ルシファー」(イラスト(C)合間太郎)

 今回の原稿を書くにあたって、何人かに「ルシファーって何?」と聞いてみた。するとルシファーとサタンは同じ、と思っている人が多いのに気がついた。それとフリーメーソンとの関係を言う人も多い。そこで今回は、ルシファーとサタンの違いに絞って書いてみる。

 ユダヤ教、キリスト教は一神教で、唯一ヤハウェの神のみを神とする。他の宗教は、すべて邪教なのだ。今からおよそ7千年前、中東の砂漠で遊牧民に崇拝されていたヤハウェは、唯一の神になろうとして、周辺の神々や宗教を自分の傘下に入れ、彼らを神ではなく天使にして自分より下の存在とした。そして、その中にルシファーもいた。

 ルシファーが、どこの地方の神であったかわからないが、旧約聖書のイザヤ書に「黎明(れいめい)の子、明けの明星よ」とあるように、もともとルシファーには「光をもたらす者」という意味があり、太陽が昇る前に光を放つ金星になぞらえた。日本でも金星は明けの明星と言われ、人々の希望の星である。悪魔王ルシファーには暗黒のイメージがつきまとうが、元は光の天使なのである。

 「あれ、悪魔王ってサタンのことじゃないの?」と言われそうだが、サタンと呼ばれる者にはルシファーの他に、キリストを誘惑するサマエルもサタンと呼ばれるところから、正確には、サタンは役職名と考えたほうがいいだろう。悪魔王の代名詞と思ってもいい。

 そしてルシファーは、独裁的なヤハウェに対し反乱軍を組織して戦いを挑み、地に落とされた。こう書くと「ルシファーって勇敢で、悪くないんだ」と思うかもしれないが、ルシファーを利用して悪事を働く人や組織が多いのも事実。そもそも悪は善があってこその価値観である。何を善とするかで悪の内容が決まるし、善と悪が逆転する場合もある。

 あらためて「悪とは何か」という大命題を思うとき、最も優秀な美貌の天使から、地獄の大悪魔へと転落したルシファーへの興味は、計り知れないほど深く、実に魅力的である。

 (日本妖怪研究所所長)



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