亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

マンティコア(インド)

2019年12月30日

地上戦、最強の怪獣か?

「両眼を真っ赤にして、人間を主食とするマンティコア」(イラスト(C)合間太郎)

 「マンティコア」と聞けば、かつてイギリスのバンドELP(エマーソン、レイク&パーマー)が設立したレコード・レーベルの名を思い浮かべる人もいるだろう。彼らの組曲「タルカス」は、オーケストラで演奏されたり、驚くことにエレクトーン教室で小学生が演奏したりと、ファンの幅が広い。

 タルカスとは火山の噴火から生まれ、世界のすべてを破壊する最低のロクデナシで、まるでアルマジロと重戦車が合体したような姿をしており、左右に大砲も備えている。タルカスは向かうところ敵なしで次々と相手を倒していくが、最後にマンティコアと戦い、そのサソリの尾で目を切られ、敗れ去る。

 後になってELPは、このマンティコアを自社のレコード・レーベル名とマークに採用する。その理由を想像してみるに、彼らの音楽は、メンバー3人の個性がぶつかり合わさったもの。つまり、人間の顔とライオンの胴、サソリの尾という三つの要素を持った合体獣、複合魔のマンティコアがふさわしいと考えたのかもしれない。

 マンティコアは、数ある怪獣の中でもかなりどう猛な部類で、足が速く、跳躍力もあり、人を好んで食べる。なにしろ「マンティコア」という言葉は、ペルシャ語で「人食い」という意味を持つのだから。森の中などで最も出合いたくない相手である。

 その動きからして「人食い虎ではないか」とも言われ、インドを生息地としていることからも虎の可能性はある。雨の降る大嵐の夜にやってきて、フルートのような美しい声を発するとも言われるが、出合ったら最後、瞬殺されてしまうだろう。顎には3列に並んだ鋭い歯を持ち、まるで弱点がつかめない怪獣なのだ。

 音楽の創造上の怪獣とはいえ、核分裂から生まれた最強の破壊の権化「タルカス」。その進撃を止める役に採用されたマンティコアは、地上戦では最強の怪獣かもしれない。

 (日本妖怪研究所所長)



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