亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

ユニコーン(スコットランド、ローマ他、アジア。ヨーロッパ全域)

人々の共通認識としての一角獣
2020年1月13日
「処女には弱いユニコーン」(イラスト(C)合間太郎)

 ユニコーンは額に一本の角がある白馬の姿をしていて、性格はいたってどう猛。相手が象であろうと恐れずに突進する。古くは『旧約聖書』の中に幾度となく「野牛」や「雄やぎ」という呼び名で出てくる。例えば「ダニエル書」第8章第5節には「このやぎには、目の間に著しい一つの角があった」とあり、このやぎが2本の角を持つ雄羊に突進し、一撃でその角を砕いてしまう。またポーランドの民話に「ユニコーンはノアの方舟の中で見境なく他の獣を突くので、ノアは水の中に放り込んだ」とある。その性格や姿形は、どうも古代から一貫しているようだ。

 グリム童話の「勇敢な仕立て屋の話」にも登場し、突進して角が木に刺さったところをつかまえられてしまう。しかし、この凶暴なユニコーンも処女にはすこぶる弱い。純粋無垢(むく)な処女に出会うと、その膝で居眠りをする。そのときがユニコーンを捕獲するチャンスである。と言うのは、ユニコーンの角には強力な解毒作用があるからで、いかに猛毒を含んだ泉でも、ユニコーンの角を浸すと清らかな水に変わる。だから、貴族はユニコーンの角を持っていることを自慢し、薬屋は角をつぶして薬に混ぜた。この角の効力は、絶大なものとして長期的に信じられていたようだ(サイの角と間違えたとも言われてますけどね)。

 多くの国にユニコーンや一角獣の伝説はあり、有名なところで言うとスコットランド王家の紋章になったり、冬の夜空に一角獣座として輝いている。不思議なことにユニコーンには古来より、国が違っても共通したイメージが存在する。もしノアが、ユニコーンを方舟に乗せていたとしたら、大洪水を生き延びて現実に走り回っていたかも。ノアが波間に葬るより以前に、ユニコーンが存在した記憶を、われわれは何千年にもわたって共有してきたのかもしれない。遠い過去に、世界中でユニコーンを見て、手で触れていたと思いたい。

 (日本妖怪研究所所長)



サイト内検索