亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

ドゥエンデ(スペイン、フィリピン、メキシコ他)

2020年4月20日

座敷わらしに似て非なるもの

その姿は『夏の夜の夢』のパックに似ている(イラスト(C)合間太郎)

 よくドゥエンデを「日本の座敷わらしに似ている」とか「そのもの」とかいう人がいるが、ただ家の中にいる精霊というだけで、まったく似て非なるものだ。例えば、スペイン、アンダルシア地方にこんな話がある。

 仲の良い3姉妹が、毎朝、小麦粉をこねてパンを焼いていた。ある朝のこと、なんとパンはきれいに焼けて、すっかり仕事が終わっていた。そんなことが数日続いたので、姉妹は物陰からこっそりのぞいてみることにした。すると神父の姿をした小さな男が現れ、完璧に仕事をこなしている。でもその僧の衣がぼろぼろだったので、感謝の気持ちから姉妹は新しい衣を縫って台所にかけておいた。次の朝、やってきた男は「新しい服さえ手に入れば、もうパンなど作るものか」と言って出て行き、二度と帰ってくることはなかった。

 また、ドゥエンデは恋もする。恋人には惜しみなく財宝を贈るが、そこに恋のライバルが現れると、その恋敵ではなく恋人に怒りをぶつけてベッドを汚物で汚したりする。ドゥエンデはきれい好きで、不潔が悪だと思っているのだ。この場合のドゥエンデは、老木の洞に住み、スマートな紳士のように振る舞うという。娘の母親が、ドゥエンデといつもデートする場所を見つけて十字架を立て、娘に十字架のネックレスを掛けると、ドゥエンデは手出しができない。この話は悪魔の伝承と絡んで興味深い。

 国によっては、ギタリストやダンサーが演奏や踊りの絶頂に達するとドゥエンデが見えることがあり、卓越した演奏者にはドゥエンデが宿っているという。神がかりなプレーヤーは人智を超えるのだ。「宿る」という意味では座敷わらしと同じようだが、座敷わらしは人にはつかず、主に家につき、芸術的センスはなさそうだ。同じドゥエンデでもお国柄がある。スペイン語圏の、いろんなドゥエンデを探してみるとおもしろいですよ。

 (日本妖怪研究所所長)



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