亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

妖精 ヘッドリー・コウ(イギリス(コーンウォール))

2020年6月1日

私は運がいいねえ!

このばあさんをおどかしても、つまんねえ!(イラスト(C)合間太郎)

 今回は、コーンウォールの昔話をしよう。一人暮らしで貧しいおばあさんだが、いつもニコニコしていて「私は運がいいねえ」と思わない日が一日もない、今で言う「超前向き」な、おばあさんの話…。

 ある日の夕暮れ、仕事を終えての帰り道。古い壺(つぼ)が道端に転がっているのを見て、「まあ、花びんくらいにはなるでしょう」と、おばあさんが持ち上げようとしたら、あまりの重さにびっくり。よく見たら、中に金貨がどっさり入っていた。

 それで肩かけをはずして壺に結びつけ、引きずって行くことにした。「私は運がいいねえ。こんなにたくさんの金貨を何に使おうかねえ」と言いながら歩いていると、急にガクンと重くなった。見ると、壺が銀のかたまりに変わっている。「金貨はもめごとの種になるけど、銀なら小銭にしやすいというもんだ。私は運がいいねえ」と言って、また歩き出した。

 しばらく行くと、またガクンと重くなった。見ると今度は銀が鉄のかたまりに変わっている。「おや鉄だったのかい。でも、銀を売るより鉄の方が、近所のうわさにならなくていい。私は運がいいねえ」と言って歩き出し、ようやく家に着いた。

 鉄を家に入れようとしたら、なんと今度はただの大きな石に変わっている。「なんだ石だったのかい。最初からわかってりゃ、ここまで運ばなくてもよかったのに。まあ、この石で畑の門を閉めたら、動物も入ってこれずに畑を荒らされることもない。私は運がいいねえ」と言って、石にふれた瞬間、石から4本の足と尻尾が出て「ケケケケ」と笑いながらどこかへ行ってしまった。

 それでも、おばあさんはニコニコと「あれが話に聞く、何にでも化けるヘッドリー・コウだね。この年になって会えるなんて、私は運がいいねえ」と言って、その後も変わらず、人のいやがる仕事も楽しそうにこなし、一生をおくったという。

 人生は何事も自分のとらえ方しだい。自分の気持ちで「幸せ感」がちがってきますね。

 (日本妖怪研究所所長)



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