亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

アンタイオス(ギリシア(古代リビア))

2020年6月16日

大地から力を補給する巨人

地獄で、ダンテとウェルギリウスを救う巨人(イラスト(C)合間太郎)

 ギリシャ神話の中で、エウリュステウス王はヘラクレスに難題を次々とふっかける。その11番目が「黄金のリンゴを取ってこい」というもので、その道程に出てくるのがアンタイオスだ。海神ポセイドンの子で、古代リビア(北西アフリカのナイル川西側)を通る人に、片っ端から格闘を挑み、次々と殺しては、相手の宝物でポセイドンの神殿を飾った。

 リビアをヘラクレスが通りかかると、例によってアンタイオスが格闘を挑んできた。怪力では負け知らずのヘラクレスだが、何度もアンタイオスを地面に投げつけ、やっつけたと思ったらすぐに復活して挑戦してくる。人々が「アンタイオスは大地の神ガイアの子だ」と言っていたので、大地から力をもらって復活してくることに気づき、それならばとアンタイオスを両腕に抱えたまま、足が地面に着かないようにして絞め殺した。

 ギリシャ神話でアンタイオスのシーンはほんの数行で、短縮版や漫画では、はぶかれるようなエピソードだ。しかし絵画や彫刻の分野では、ヘラクレスに絞め殺される場面を描いた作品は多い。

 また、ダンテの『神曲』にもアンタイオスは登場する。『神曲』とはダンテが地獄、煉(れん)獄、天国を巡る物語で、ダンテとその師ウェルギリウスを、地獄の井戸の底から助ける巨人として登場する。アンタイオスは2人を危険な場所からそうっと運んで静かに降ろす、とても親切な巨人なのだ。人気があるのかないのか、よくわからない巨人だが、なんとシャネルが「アンタウス(アンタイオス)」という男性用の香水を発売している。95種類以上の成分からなる複雑な香りで、男性の二面性を表しているらしい。

 ポセイドンとガイアの子、もしくはどちらかの子と言われるだけあって血統は正しく、チョイ役での登場はもったいない。地面に立てば充電(?)できるのだから、本来なら不死の巨人であろう。充電式乾電池の商品名にしてもいいかも。

 (日本妖怪研究所所長)



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