亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

マルコシアス(イスラエル、他)

2021年3月8日

呼び出すなら、この悪魔

戦いでは負け知らず、猛将マルコシアス(イラスト(C)合間太郎)

 私が悪魔に興味を持ったのは、小学校6年生のときに読んだ少年マガジンの特集、決定版シリーズの「黒魔術」から。当時の少年マガジンは女の子の水着写真なんてなく、読み物も充実していて、子どもにとって歴史や民族学、SFなどへの入り口だった。切り抜きが現存している特集は「自動車の怪奇」「円盤が世界史を変える」「四次元世界」「ブラックユーモア入門」「魔女入門」「死体復活」「幽霊学入門」など。今見てもワクワクしてくる。

 その「黒魔術」の特集の中で亀井少年の心をつかんだのが、ソロモン王によって封印された72体の悪魔のうち、35番目に掲載されている「悪魔マルコシアス」。「侯爵で戦争に強く、魔術師によくつかえる」と書かれている。この内容は他のいかなる文献でも基本的に同じで、子ども相手といえど、手は抜いていないのだ。

 K・セリグマンの名著『魔法』には「マルコシアスは地獄の大侯爵で狼(オオカミ)の体にハゲタカの翼とヘビの尾をつけて現れる。(中略)サタンの墜落前は主天使に属していた。彼はいま、30個軍団を指揮している。彼の望みは千二百年後に第七天の玉座に復位することである」とある。コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』にも同様の記述があり、他の悪魔と一線を画す。

 多くの文献を比べてみてマルコシアスの特徴は、(1)地獄の大侯爵である(2)黒狼の体を持ち、口から火か何かを吐いている(3)地獄で30個軍団を率いている(4)元は天使である(5)魔術師に弱い(よく従う)(6)人間(兵士)の姿でも現れる(7)質問には誠実に答える。

 ね、なんていいやつなんだろう。勇敢で賢く、人によく仕え、正直者。これが悪魔と言えるのかと思うほど。

 子どもの頃、空き家に忍び込んで、魔法円を描いて悪魔を呼び出すまね事などをしていた。他の悪魔ではなく、マルコシアスに会いたかったのだ。

 (日本妖怪研究所所長)



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