亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

猫怪(中国)

2021年3月22日

猫には猫の社会あり

姿は普通の猫だけど、化けると怖い猫怪(イラスト(C)合間太郎)

 日本の猫は、何十年か生きた後に尾が二つに分かれて、化け猫「猫又(ねこまた)」となる。しかし、中国の化け猫「猫怪(びょうかい)」は、早いものは3年以上生きると化けるものがある、しかも、尾は二つに分かれない。雄猫は男に、雌猫は女に化け、相手を誘惑し、精気を吸い取る。このへんは両国共通。

 中国にあって、日本ではそれほど実行されなかったのが、猫を殺して人を呪う「猫鬼(びょうき)」という呪法。隋の時代(581〜618)に宮中で流行したそうで、あまりの呪いの応酬に禁止されたが、こっそり宋の時代(960〜)まで続いたようだ。猫鬼を使って相手を殺したり金品を奪ったりするのである。

 おもしろいのは、中国では飼い猫のことを「狸奴(りど)」とも言い、「狸」とはタヌキのことではなく、山猫や野生の猫を指す。「狸」の言うとおり動く奴隷が、家で飼われている猫なのだ。ここにピラミッド型の猫社会が想像できる。きっと「狸」にも階級があるのだろう。

 また、日中共通なのが人語を解する猫の存在である。うっかり人語をしゃべって人に見つかる猫の話は多数ある。照れくさそうに逃げたり、逆に人を脅したり、つかまえられそうになったら猿に化けたり、猫は変幻自在である。

 人の言葉をしゃべる猫の話で秀逸なのは、水木しげるの「ねこ忍」であろう。人語を解する猫から猫語を習う男の話で、猫語をすっかりマスターした後、猫の集会に連れて行かれる。大勢の猫に囲まれて、逆に彼が猫の奴隷になったことを悟るのである。一生、猫のために働き、逃げようとしても常に猫たちが監視しているのだ。

 人の社会に溶け込んでいるように見えて、猫は人に飼われているフリをしているだけなのかも知れない。そんなふうに見えませんか?

 (日本妖怪研究所所長)



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