亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

マートレット(イギリス)

2021年5月3日

探求・冒険・前進の象徴

休むことなく超スピードで飛ぶイワツバメ(イラスト(C)合間太郎)

 貴族の次男以下、特に四男の紋章に使われることの多い、足のない鳥「マートレット」。受け継いだ領土は長男のものであり、次男以下は踏みしめるべき領土を持たない。きっと主家に頼らず生きていけ、ということなのだろう。

 また、人は常に前進し、進歩する。知への探求、冒険につぐ冒険、それこそが生きがいという意味で、休むための足を持たない鳥なのだ。リチャード二世(在位1377〜1399)の紋章や、知の探求という意味で、大学の紋章にも使われている。

 紋章は、足の代わりに短い羽が二つ付けられ、顔を斜め上に向け、上昇していくイメージで描かれる。とにかく前進あるのみ。羽を休めることなど考えないのである。

 名前の由来はマーティン(イワツバメ)という鳥に付けられた「小さなマーティン」という愛称から来ているようで、他にアマツバメも足が小さいゆえに、マートレットと呼ばれていたようだ。

 イワツバメは時速175キロで、11カ月もの間、休みなく飛び続けたという報告もある。眠るのも食べるのも水を飲むのも交尾するのも、超スピードで飛びながらやってしまう。集団でも飛行し、足を出さずにスピード重視の姿勢で空気を切り裂く。

 マートレットの紋章に込められた「探究心」は良しとして、なりふりかまわずの進歩主義は近年になってほころびを見せ、環境破壊へと向かい始めた。このコーナーでは世界の怪物や化け物を取り上げているが、マートレットの怪物性は、われわれの行き過ぎた進歩の反省から見えたような気がする。いわく「立ち止まって考えよう」と。

 探求の権化「ファウスト」の戯曲にも、どこかイメージで、マートレットが使われていないかな。気になってきたので、ちょっと舞台や衣装を調べてみよう。(日本妖怪研究所所長)

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