亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

無常鬼(中国)

2021年6月15日

中国の死に神は 死者を「連行」する

われら死に神「無常鬼」2人組!(イラスト(C)合間太郎)

 日本人が考える死に神とは、あの世からやってくる使者のような存在で、「お迎えに参りました」と言って道先案内をしてくれるが、中国の死に神は六朝(りくちょう)時代(222〜589)、あの世から「逮捕状」を持ってやってくると信じられていた。黄色い衣をまとった2人1組の彼らは、死者をあの世に「連行」するためにやってくる。まるで一般人を罪人扱いですね。

 やがて南宋(なんそう)の頃(1127〜1279)になると、下役が派遣されるようになり、それが今回の「無常鬼(むじょうき)」である。彼らも2人1組で、それぞれ「白無常(はくむじょう)」「黒無常(こくむじょう)」と呼ばれ、2尺ほどの高さの頭巾を被り、それが白と黒で衣装も白と黒である。だが、明確な役割分担があるわけではなく、白無常だけが単独で現れる場合も多い。黒無常はちょっと添え物のイメージがある。

 やがて明の時代(1368〜1644)になると、あの世の人口が増え過ぎて、無常鬼の仕事も人手不足になり、代理の使者「走無常(そうむじょう)」を派遣するようになる。この走無常はまだ生きている人間の場合もあって、指名されると突然死んだようになり、2、3日して息を吹き返す。きっと、その仮死状態の間に走無常の役目を果たすのだろう。

 なんとなく彼らは「神」ではなく、ただの「役人」という気がする。役人だからこそ、死にそうな人間が無常鬼を買収したり、おどしたりして死期を遅らせる話が伝わっている。ホント「地獄の沙汰も金しだい」なのである。

 中国では人をおどして金品をまきあげる「にせ無常鬼強盗」もはやった。これなどは、無常鬼が人々にどんな印象を持たれていたか、よく表していると思う。そもそも「あの世へ連行」という捉え方が、日本の死に神や死の概念と根本的に違うようだ。

 (日本妖怪研究所所長)



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