亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

ピクシー(イギリス)

2021年9月6日

小さな妖精の代名詞

ピクシーは緑の小人。これも小さな妖精全般に言えますね(イラスト(C)合間太郎)

 ピクシーは小さくて、羽が生えているものと生えていないものがある。ディズニー映画のティンカーベルのように、かわいいのや小人、じいさん姿まで、いろんなピクシーがいる。

 キリスト教では、洗礼を受けずに死んだ子どもの霊で、特にキリスト教以前の土着の宗教の子がピクシーとなり、救済を求めていると言われる。また、妖精のいたずらで、かわいい赤ちゃんを、しわくちゃ顔の妖精の子と取り換える「取り換えっこ(チェンジリング)」も、ピクシーのしわざと言われる。

 でも、ピクシーは人間の仕事を手伝ってくれることもあって、朝起きると部屋の中がきれいにかたづけてあったり、畑の小麦が収穫されていたりする。

 ある男が道に迷って歩き疲れ、上着を脱いで休み、再び上着を着て立ち上がると、周りの景色が変わって帰り道がわかった。彼はピクシーの魔法にかかっていたのだ。なぜ魔法がとけたかと言うと、上着を着るとき、まちがえてウラ返しに着たから。また、家にいるピクシーに新しい服をプレゼントすると、彼らは退散せざるを得なくなる。

 こんなピクシーの特徴は、よく見たら小さな妖精の特徴全般に言えるもので、特にイギリスの南西部では、他のレプラホーンなどの妖精も、小さな妖精はみんなピクシーのことになっている。これは、ハエ、ホタル、トンボなど、空飛ぶ昆虫はみんな「フライ」、きれいな昆虫は「ビューティフリイ」と言うのに似ている。細かい名称にこだわらないのだ。

 また、欧米人は虫の声が雑音にしか聞こえないらしい。虫の声を鑑賞できるのは「秋の夜長を鳴き通す〜」と歌う、日本人くらいと言われている。虫も小さな妖精も細かく分けて考えないので、小さな妖精全般の特徴がすべてピクシーに投影されるのは、そんな理由からかもしれない。ピクシーとはいわば、妖精の代名詞なのだろう。

(日本妖怪研究所所長)


サイト内検索