亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

財神(中国)

2021年11月16日

福の神と言うより金もうけの神

財神のうち武財神の「趙公明」(イラスト(C)合間太郎)

 中国では漠然とした福の神より、実利のともなう金もうけの神「財神(ざいしん)」が人気である。それも武人の神様「武財神」と、文人の神様「文財神」とに分かれる。

 武財神としては三国時代、蜀漢(しょくかん)の武将「関羽(かんう)」と、道教の神「趙公明(ちょうこうめい)」が代表的で、文財神としては、殷(いん)王朝の人で非業の死を遂げた「比干(ひかん)」や、春秋時代の斉(せい)国の君主「桓公(かんこう)」、斉国の政治家「管仲(かんちゅう)」が有名。その他、地方の無名の財神も多数存在する。

 ここでは、神様の説明よりもエピソードのおもしろいものをお伝えしよう。

 あるところに貧乏な呉(ご)という男がいた。深夜、家の垣根の上から光が差し、緋色の上着に金の冠を被った財神が現れ、「明日は余の誕生日じゃ。もし酒食を供えて祀(まつ)ってくれれば、巨万の富で報いるであろう」と言うので、呉が有り金はたいて供え物を用意して待っていると、東の垣根の下で無数の光が点滅した。

 翌朝、そこを掘ると銀三千両が出てきたが、巨万の富と言うには小さすぎると思ったら、その夜、またも財神が現れ「あれは元手じゃ。あの金を使えば、たちどころに数十万両になる」と言うので、その通りにすると年末には大金持ちになったという話。巨万の富のための元手だけ渡すというのが、神様にしては、なんだかみみっちい気が…。

 また、財神がお参りに来る人々に、気前よく財をどんどん与えていたら、与えすぎて悪人がのさばるようになってしまい、天の神の怒りに触れ、その財神は両目をくりぬかれたとか、財神を「おらの村のだ」と言って地域で奪い合った話とか、財神が外を向いていると「財が逃げる」として、家の内側を向かせて祀る話など、庶民目線の話がすごく多い。

 そのどれもが漠然とした良いことではなく、ソロバンではじいて金額提示できそうな財をもたらすのが財神。まあ、中国らしいと言えば中国らしいのかな?

(日本妖怪研究所所長)


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