亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

トコロシェ(南アフリカ)

2022年6月20日

日本の妖怪に似て非なるもの

注意! 小鬼といっても人を殺すときもある(イラスト(C)合間太郎)

 今回の化け物は南アフリカのズールー族に伝わる「トコロシェ」。背は30センチほどで小さく、ロシアのグレムリンのような小鬼である。子どもと遊びたがるが、鋭い爪でひっかくこともあるので、子どもたちは要注意。人の夢の中にも侵入できる、いわば悪霊である。

 1994年、南アフリカで全種族による初の総選挙が行われたが、投票所の机の下にトコロシェがひそんでいて、誰がどの党に投票したか探っていたという。また10年もの間、トコロシェが家の中でお金を盗んだり、勝手に何か食べたりしているという女性もいるというから、トコロシェの都市伝説は今も盛んだ。

 トコロシェは悪霊なので悪霊退散の呪法や道具が、ズールー族に存在する。その中で日本でもよく使うのが「塩」である。呪術で体を治す治療師(ヒーラー)が用いるのだが、「スペシャル・トコロシェ・ソルト」の商品名で一般に販売すると大ヒットした。スーパーで200グラム65円程度で手に入るらしい。塩の扱いは日本と似ていて、室内にまいたり、体にかけたり、調理に使ったり。

 またトコロシェの撃退法も似ていて、自分の体を大きく見せると彼らは去っていく。ベッドの上で大きく伸びをしたら、トコロシェが逃げ出したという話もある。日本でも「見越し入道」などは、入道より大きく伸びて見下すと消える。

 トコロシェはCDのタイトルになったり、楽曲のテーマになったり、小説になったり、映画になったり、ミニカーで有名な「トコロシェ」という名の模型会社もある。日本でいうカッパのように、一般に知られた存在なのだ。でもひとつ、日本の妖怪と決定的に違うところは、ちっともかわいくないところ。たいていグロテスクで「妖怪は友達」なんて決して言えない。最近は、かわいいトコロシェのイラストぐらいはあるかも知れないけどね。

(日本妖怪研究所所長)


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