亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

ナッ(ミャンマー)

2022年8月1日

日本の神様に似ているかナッ!

ミャンマーでは最もポピュラーな神「ナッ」(イラスト(C)合間太郎)

 今回はちょっと発音しにくい神「ナッ」である。しにくいと言うより、なんだかおさまりが悪い「Na」なので「Nat」とも言う。でも本来は「Na」なので、ナッと言って始めよう。

 ナッはミャンマーの神様だが、ミャンマー人の多くは敬虔(けいけん)な仏教徒である。日本も仏教徒が多いが、主に祖先を祀(まつ)ることを主としている。しかし、ミャンマー人は本来の個人の解脱を求める仏教徒なのである。反面、ナッと言う精霊も古くから信仰されており、それぞれの部族で今も定期的にナッの祭りが盛大に行われる。この関わり方が、お寺で手を合わせ、神社も参拝するという日本人によく似ているのだ。

 だが、日本の神様と決定的に違うのは、国産みの神話がないこと。その他は、権力者に反抗し非業の死を遂げた人物を祀るなど、日本の御霊信仰に似ているものもある。現世利益を重視するのも、似かよった所だろう。また、地域のナッの伝説が、われわれと感性が違い過ぎておもしろいのだ。

 例えば、有名なビャッウイとビャッタの「タウンビョンの兄弟神」の伝説を少し紹介すると、この兄弟がまだ人間だった頃、錬金術師の遺体を食べて強大な力を授かったり、兄のビャッウイは処刑されることになるのだが、彼の体を刻み、内臓といっしょに王宮に埋め、血を城壁に撒(ま)くと、その都市タトンは難攻不落になった。そして、弟のビャッタは山で花を食べている鬼女と恋仲になって子供もできるという、変だけど、すこぶるおもしろい話がどっさりある。

 また、ナッは人間には見えない。人や家屋、村落の守護霊だが、供え物を怠ると災厄をもたらしたり、気分によって幸せどころか不幸を呼び寄せもする。

 まことに興味がつきないナッだが、日本と似たところ、違うところをもっと現地調査する必要があると思う。でもこの時期、難しいかナッ?

(日本妖怪研究所所長)



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