岡力の「のぞき見雑記帳」

株式会社ダイヤ 多田俊介社長

2021年4月13日

創意工夫のアイデアで 経営に挑む老舗ベーカリー

会社前で製品を持つ多田社長

 「社名は横文字ですがベタベタの大阪企業です」。そう語るのは、大阪市生野区新今里で製パン業を営む『株式会社ダイヤ』の多田俊介社長。1946年に鶴橋で創業。戦後、和菓子職人だった先々代が進駐軍から支給された小麦粉でパンを製造。しかし「発酵」という化学の理屈が分からず、製粉や油脂を扱う大手メーカーから指導を受け試行錯誤の末に製品化した。

 当初は学校給食や工場の軒先、市場で販売を行っていたが、1963年に梅田の地下街へ進出した。自家製にこだわった調理パンを販売する『クックハウス』は、会社勤めの忙しいサラリーマンやOLの間で瞬く間に評判となった。

 2004年には近鉄上本町駅の「駅ナカ」で開業。スペースは狭小だったが、セントラルキッチンという画期的な形態と学生や主婦が買い物へ来るようになり、売り上げは予想をはるかに上回り一大チェーンを築いた。その後、百貨店への進出を計画。「絶対的な武器が必要」とじっくり商品開発に挑み、『ダイヤ製パン』という新たなブランド名で高島屋へ出店した。全ての事例に綿密な経営戦略があったわけではなく、「時代の節目に訪れる不思議な縁で実現してきた」と振り返る。

 現在、「パン」という生き物を扱う業界では「非効率な業務」や「人件費」など大きな問題が立ちはだかっている。そんな中、同社では機械化によるムラのない製造やシステムのIT化で改善に取り組んでいる。他にも手塚作品とコラボしたキャラクター商品や北海道の十勝で収穫した小麦を最速で使用するなど、新たな取り組みが行われている。

 「うちに『ミルクパン』というロングセラー商品があります。製法にこだわり、味に正直なお子さまが他社だと泣きだすという話も聞いております。これを隠れた大阪名物にしていきたいですね」と意気込む多田社長。手には、社名のように小さくてもきらりと光る“浪速生まれ”のパンがあった。

(コラムニスト)
■公式HP https://www.cookhouse.jp


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