岡力の「のぞき見雑記帳」

『株式会社 三暁』代表取締役社長 早間寛将さん

2021年5月10日

機械ではまねできない 鍛冶屋の技術を継承

デニム地の制服で錨を手にする早間さん

 アニメーション映画『崖の上のポニョ』のロケ地として知られる広島県福山市『鞆の浦』。多くの観光客が訪れる港町の一角には、70社余りの製造業が集結する『鞆鉄鋼団地』がある。

 「たとえ1万個造ったとしても絶対に不備があってはいけない」。そう語るのは橋梁用金物、ワイヤロープ端末金物を製造する『株式会社三暁』(広島県福山市鞆町後地26の179)3代目社長の早間寛将さん。1951年に『三暁船具製作所』として創業し漁具金物の製造を開始。近年は徹底した品質管理体制と業界屈指のハイテク設備により、大阪をはじめ全国の有名建築物やつり橋、テーマパークなどで製品が使用されている。

 また最近では職人の手仕事をコンセプトにした新規事業が話題を呼んでいる。金属を1200度以上に熱してハンマーでたたきながら成形加工する「自由鍛造」とよばれる製法。今から5年前、その高い技術を保持しながらも高齢化のため廃業した近隣の鉄工所から設備、ノウハウ、職人を雇い入れ船舶の錨(いかり)を製造するようになった。「これはなくしてはいけないと思いました。北斎漫画の頃から錨の形は変わっていません。職人が焼いてたたく姿にほれました」。現在、錨を作る鍛造工場のみ一般公開され地域の観光に一役買っている。

 また、2018年からは既存の金属加工技術に自由鍛造技術を取り入れた家具ブランド『TAonTA』(タオンタ)を展開。すぐさま大手メーカーのOEM商品として採用され、唯一無二の機能性とデザインフォルムは高い評価を得ている。

 これまでのノウハウに職人の手仕事が加わる事で新たな需要が生まれている。瀬戸内海に臨む工場で誕生した錨には、確固たる軸と人のぬくもりがあった。

(コラムニスト)
■公式ホームページ https://sangyoco.co.jp/


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