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下書きなしで職人芸を披露する上林修さん |
「こつですか? 手描きならではの崩し方があります。慣れもあるけど布、木、紙は失敗したら修正できないので気合を入れるしかないです…。まあ、適当にすることですかね(笑)」
さまざまな個性あふれる看板に囲まれながら筆を持つ上林修(かんばやししゅう)さんは貝塚市で育つ。子どもの頃から絵画を描くことが得意だったこともあり、高校卒業後は国立文楽劇場で舞台美術の仕事に就いた。セットの建て込みや背景を描く中で出入りの看板職人に興味を持つ。「苦労して作ったセットにさっと字だけ描いてアメ車で帰る姿に憧れた。俺…あっちに行くわ」と仲間に告げて離職した。
とはいえ、電話帳しかつてがなく和泉市にあった看板屋の親方に「いらん」と言われたが「掃除させてください」と半ば強引に通った。ガレージで作業を見守りながら雑用をする毎日。その熱意をかわれ最終的には「(月)6万でいいか?」と言われた。「職人にも上手、下手があります。親方は南海電鉄の流れでええ仕事をする方でした。夢の道具と言われたパソコンへの転換期でしたがキレイに線を引く技術や文字のバランス、レイアウトが学べてラッキーでした」と振り返る。
以前、本紙でも紹介した『千鳥温泉』(大阪市此花区)に並ぶ鏡広告も最近するようになった。「まだそんな仕事あったんやと思いました。相手が思い描くイメージの再現や小さいスペースへ文字を詰め込むのに苦労しました」。効率化が進み、かつてと比べて進め方や業務内容が変わる看板業界。「遊び心のある手描き看板が少なくなり、大阪の街も愛想がなくなりました。後進の育成もしたいし、ローカル線の駅標なんかもやってみたいね」と抱負を語る上林さん。
これまでの経験から得た変幻自在のオリジナルフォント「カンバヤシ」は、今日も自身の指先から繰り出される。
(コラムニスト)
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