ジャガ芋の一斉に芽ぶくを見とどけて五月の旅へ自転車を踏む |
土江 康一 鳥取県境港市 |
来世でも男と言い切るきみほどのあかるさを知らず日向を掃きぬ |
山下 裕美 京都府宇治市 |
よく笑う男でしたねあの頃は糊の効きたるシャツを着ていて |
北川 敦子 鳥取市 |
鳥取に六十年間暮らしいる認知症の姑は京都弁つかう |
岸下 澄江 鳥取市 |
云う時は今ではないと喉元の言葉を飲み込むお茶汲みに立つ |
坂口 久恵 鳥取市 |
ふたりきりエレベーターが上にゆく時が止まれば告白してた |
飯井 純子 東京都八王子市 |
その瞬間羽ばたくような顔したね「あんよは上手」の初めの一歩 |
織田桐真理子 鳥取県米子市 |
「幸せな時間」はとてもせっかちでお茶も飲まずにお帰りになる |
木下 務 大阪府吹田市 |
紫蘇もんで世に淡く住む老い母に白湯の如くに過ぎ行く時間 |
有永 吉伸 埼玉県朝霞市 |
幼き日画用紙に書いた未来都市まだまだ時間がかかりそうだな |
市原 ゆか 埼玉県朝霞市 |