幹細胞再生医療で回復 難病の新治療法 簡単採取、培養後に点滴

インタビュー 「今から先への医療」代表 酒井康雄さん

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 生活習慣病や神経後遺症、免疫疾患などの難病に、新たな治療法として注目を集めている「幹細胞再生医療」。昨年末に、有名アーティストがこの治療を受け復帰した事でも知られている。幹細胞再生医療と、患者の架け橋として活動する「今から先への医療」(大阪市北区)代表の酒井康雄さんに話を聞いた。

 -幹細胞とは。

 人の体はおよそ69兆個の細胞からできており、それぞれの細胞は、筋肉や神経などの体の機能に応じて、役割が決まっている。ところが「幹細胞」は、決まった役割を持たず、弱った組織に吸着し、新しい細胞へ変化することで回復を促す特殊な細胞だ。人の体内には必ずある細胞だが、赤ちゃんが持つ幹細胞を100%とした場合、50代では2・5%まで減少する。

 -幹細胞再生医療とは。

 この幹細胞を使った治療が「幹細胞再生医療」だ。日本では、2014年に、再生医療法「再生医療等の安全性の確保に関する法律」という法律ができ、国内の厳しく審査された医療施設で、誰でもこの治療を受けることができる。治療はシンプルで、患者自身の体内にある幹細胞を採取し、1カ月半かけて約1万倍になるまで培養。そして、静脈点滴で再び体内に戻すというもの。使用する幹細胞は「間葉系幹細胞」と呼ばれるもので、皮下脂肪から簡単に採取できる。人工的に作られるES細胞や、iPS細胞は現在も臨床実験中で、安全性を実証し実用化されるまではもう少し時間がかかりそうだ。

記者メモ

 酒井さんが案内した患者の中には、くも膜下出血後遺症の神経障害、難病指定されている多系統萎縮症、脊椎間狭窄(きょうさく)症で歩けないなど重度な障害で悩んでいた人も多い。酒井さんは、治療を受けた患者の様子について「回復傾向がみられるケースが非常に多い」「神経障害で動かなかった体が動くようになり、人生を再スタートさせた人もいる」と話している。

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