大阪市議会の議員定数が2027年の次回選挙から、現行の「81」が11減って「70」となる。今年4月にあった市議選で単独過半数の議席を得た大阪維新の会(46人)をはじめ、公明(18人)、自民・市民ク(11人)の主要3会派による賛成多数で条例改正案を可決した。年間約2億円の削減効果を主張する一方で、「少数の民意が届きにくくなる」「行政へのチェック機能が後退する」との反論も根強い。識者からは、維新が公約に掲げた“身を切る改革”としての削減効果を疑問視する声も上がる。
「削減はマニフェストにも掲げた。選挙で一定の負託を受けた以上、速やかに実行したい」
6月9日の市議会本会議で、維新の高見亮幹事長代行が高らかに提案理由を朗読。「市は合理的な行政の実現にまい進してきた。議会も同様の努力をするのは当然だ」と続けた。
多様な選択肢を
改正条例によると、24選挙区のうち東淀川、平野など定数が3~6の計11区でそれぞれ1議席ずつ減らす。落選候補者への票(死票)が増えないよう1人区をつくらず、20年の国勢調査にのっとって、「一票の格差」が衆院選で「違憲状態」の目安となる2倍を超えないようにしている。
政令市では、議員1人当たりの人口が横浜市議会(定数86)で約4万4千人。約3万4千人だった大阪市議会は条例改正で約3万9千人となり、名古屋市を抜いて2位に浮上する計算だ。議会がそれだけ市民から遠くなるとも言える。
採決前の討論では、共産(2人)の山中智子議員が「極めて拙速、乱暴。議席は議員の『身分』や『特権』ではなく、市民の代弁者の役割だ」と批判。自民から分派した自民・くらし(4人)は2人が賛成、1人は採決直前に退席し、武直樹議員(無所属)は「多様な声を届けるには、多様な選択肢があってこそ。“身を切る改革”と言うのなら、報酬削減で実現すべきだ」と反対した。
市民のメッセージ
これまで維新と対立する場面も多かった自民は、25年実施の国勢調査を踏まえて「所要の見直しを行う」と付則で明記することを条件に共同提案に名を連ねた。前田和彦幹事長は「積極的に削減する理由はないが、市議選の結果は真摯(しんし)に受け止めないといけない」と歯切れが悪い。公明の杉田忠裕幹事長も「定数を削減しなさい、という市民のメッセージだ」と選挙結果を賛成理由に挙げた。
11議席は定数の14%に当たる大幅削減となるが、市民に見える形での実質審議はなかった。批判に、政治団体・大阪維新の会の横山英幸幹事長(大阪市長)は「結党以来、政治家の身を切る改革を進めてきた。この1カ月で始まったわけではない」と反論する。
議会像の議論を
一方、議会からは住民参加の促進や都市内分権をセットで議論すべきとの声も上がる。手段としては夜間・休日議会や出前議会、交流サイト(SNS)の活用などで、議席減を補うよう「議員の質」を上げる必要性を問う主張もあった。
地方自治論が専門の摂南大の増田知也准教授は「議員それぞれが報酬に見合った働きをすれば、そもそも定数削減の必要はない」とした上で、「市民の意見をどう反映させ、議論の質をどう高めていくかといったあるべき議会像を先行して議論する必要があった」と指摘。削減の余波については「一定層の声を届けるルートが減り、議会全体というよりはじわじわと選挙区単位で影響が出てくるのではないか」との見方を示す。