“幻の空豆”大粒が実る 羽曳野「河内一寸空豆」

 南河内で伝統的に栽培されている希少品種の「河内一寸空豆」が収穫期を迎えている。羽曳野市古市の農場では、10センチ余りの巨大なさやがこうべを垂れて鈴なりに実った。“脱サラ”して新規就農した女性らが手作りで農園を経営し、“幻”の野菜作りに取り組んでいる。

 河内一寸空豆は、明治時代から南河内地区で受け継がれてきた品種で、一つのさやに1粒か2粒の実が成るのが特徴。さやの中の実はみずみずしく味は濃厚だ。かつて盛んに生産されてきたが、病気に弱く、収穫量も少ないことから農家に敬遠され、今では“幻の空豆”とも呼ばれている。

 「空に向かって成っているから『ソラマメ』なんです」とほほ笑むのは、同市古市の農園「七彩(なないろ)ファーム」を運営する川崎佑子さん(39)。枚方市出身で、大学で教育を学んだ後、学習塾勤務を経て家業でもない「農業をやりたい」と一念発起した。大阪の農業大学校で2年間学び、今から10年ほど前に新規就農した経緯がある。近くの農家からソラマメの種を受け継ぎ、種の採取を続けながら少しずつ栽培面積を増やしてきた。

 例年10月に種をまき、半年間かけて育てる。5月に入って収穫を始めるものの、旬はおおむね上旬から中旬までの2週間ほどと短い。普及を念頭に「生産者を紹介してほしい」と府の事務所へかけ合ったところ、返答は「分からない」というほど希少なものだった。種の保有者から話を聞きつつ、試行錯誤を続けている状況だ。

 12アールの農園では、化学肥料、化学農薬を使用しないのが特長で、ソラマメの他にも地元特産のイチジクなど6種類ほどを育てている。農作業や特製窯でのピザ作りなど体験型の催しも月に1度のペースで開いており、個性があふれる“行きつけの畑”づくりを思い描く。

 川崎さんは「いろいろな人を巻き込み、畑に来てもらう農業を展開していきたい」と展望している。

同じカテゴリーの記事