潮騒 2023.6.13

 大阪駅前辺りを歩いていると一様にスマホやカメラを空に向けている人たちの姿が目に留まった。被写体は建て替えが決まっている「大阪マルビル」だった◆完成は47年前の1976年3月で、当時の大阪駅舎は戦前に完成の3代目。大阪駅前ビルはまだ第1ビル(70年)のみで、76年11月完成の第2ビルが建設工事中という時代◆高層ビルばかりで空が狭くなった現在の梅田の風景からは想像もできないが、昭和の終わり頃までマルビルの周辺にはまだびっしりと民家が残っており、特徴的な外観はまさにランドマークと呼ぶにふさわしかった◆すでに工事用の重機が出入りする中、幅広い年齢層の人たちが代わる代わるビルを撮影。人それぞれに忘れがたい思い出がビルに詰まってるのだろう。公式ホームページでも「思い出キャンペーン」(8月29日まで)を展開し、思い出のコメントや写真、俳句、短歌などを募集している◆個人的には取材などでご縁があった当時の吉本晴彦会長が自らほうきを手にビル前を掃除されている時、偶然通りがかり、声をかけていただいたことが懐かしく思い出される。多くの人たちに惜しまれながら夏に解体に着工、完成予定は2030年。いにしえの梅田のランドマークの復活が楽しみだ。(佐)

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