中小企業、多様性守る 大阪商業大大学院 太田一樹教授インタビュー

 原材料高、人手不足など深刻な課題を抱える中小企業の現状、期待される役割、「中小企業の日」の意義を専門家はどのように見ているのか。中小企業基盤整備機構が中小企業の発展に顕著な功労のある経営者や中小企業支援機関に従事する人に委嘱する「中小企業応援士」であり、「中小企業が多様性を守っている」と強調する太田一樹・大阪商業大大学院教授に聞いた。

 -後継者難の現状は。

 「『中小企業白書』のデータから見ると、ここ数年、事業承継は進んできている。経営者は他人に事業を任したくないという思いが強かったが、従業員や技術を引き継いでくれるなら、第三者でもいいという意識に変わってきており、M&A(企業の合併・買収)が増えてきている」

 -原材料高は続いている。

 「原材料高を価格転嫁できるかどうかが二極分化してきている。丼勘定ではだめで、詳細なデータを持って交渉する必要がある。(新型コロナ禍で融資を受けた)ゼロゼロ融資の返済もある。顧客が戻っていないところはダブルで効いてくるので、この2、3年が大きな分かれ目」

 -人手不足は深刻だ。

 「賃金は上げざるを得ない。会社の魅力と賃金の両方が必要で、若い人には成長している実感、未来が感じられることが重要。ものづくりの現場から大学院に行き、中小企業診断士の資格を取った人がいる。行政や会社からリスキリングの機会を提供できれば」

 -中小企業の価値、役割は。

 「雇用、地域の文化に貢献している。多様性を守っている。同質的な発想ではイノベーションは起こらない。中小企業が多様性を保つことがイノベーションの源泉になる。中小企業経営者にはプライドを持ってほしい。職人上がりの経営者にもっと発信してほしい」

 -「中小企業の日」の認知度が低い。

 「マーケティングの手法を入れてコンセプトを明確にし、どういう層に浸透させるのか考えてみてはどうか。身近な言葉で明確に発信していく必要がある」

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