潮騒 2023.7.11

 親爆弾など一つのユニットに無数の小型弾を収納し広範囲に飛散させる兵器・クラスター弾(爆弾)。無差別に被害をもたらす点や不発弾など多くの問題を抱え、2008年のダブリン会議での禁止条約採択もあり世界にその名が知られた◆このほどアメリカがウクライナ軍へクラスター弾供与の方針を発表。ウクライナ側は反攻支援を歓迎する一方、西側諸国からは、やはり高い殺傷力を持つ兵器であることへの非難が渦巻き、再び注目されている◆クラスターは「房」などを意味。太平洋戦争末期の日本本土空襲で、米軍が投下した各種焼夷(しょうい)弾ではクラスター焼夷弾(集束焼夷弾)が多く用いられた。油脂などを燃焼剤とする複数の焼夷弾が空中で散開・着弾し各都市を焼き払った◆78年前の1945年7月10日にあった堺大空襲(第6次大阪大空襲)は深夜の焼夷弾攻撃で、一夜にして旧市域の約6割が被災。いにしえの一大リゾート地だった大浜公園の大浜公会堂も失われた◆戦後は食料・住宅不足、災害などの苦難を経て復興を遂げた堺市。空襲の傷跡を克明に残した遺構も年々姿を消す現代にあって、せめて市街中心の「フェニックス通り」が建物疎開の名残で、戦後復興のシンボルでもあることを心にとどめたい。(佐)

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