大阪ニュース

寄稿 コロナ局面での日韓協力

2020年4月4日

今こそ感情的対立抑える時


 キム・ウンジョン 大阪市立大、神戸大大学院出身。政治学博士。専門は日本政治外交史、国際政治、日韓関係。公財法人「ひょうご震災記念21世紀研究機構」主任研究員、神戸大特別研究員、関西大非常勤講師などを経て現職。
日本学術振興会特別研究員 金恩貞氏

 昨年末に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症は、すさまじい勢いで世界中に広がり、WHO(世界保健機関)が世界的大流行を認定するパンデミック宣言するまでたった3カ月しかかからなかった。深刻なのは、爆発的増加を見せる感染者を治療するための医療装備などが不足し、感染症に対する効果的な統制・管理システムに各地で限界が露呈してしまう医療崩壊の到来だ。

 そんな中で各国は、韓国の対応成功例に注目している。感染拡大のピーク時は、1日に約1万5000件を主要都市でPCR検査し、現在までの累計検査数は約43万件に達している。現時点の感染者数は9786人、そのうち死亡者数162人、死亡率約1・6%と、他国と比べ死亡率の低さが際立っている。

 まだ安心する段階ではないが、国の統制と管理が十分可能な範囲にあるといえる。韓国が短期間で感染症拡大を抑え、低い死亡率に食い止めたことを各国が評価し、隣国日本と比べても圧倒的に多いPCR検査数に注目している。

 韓国で大量検査が可能となった理由として、短時間で正確度99%の検査結果が出る韓国独自技術の診断キットと、ドライブスルーやワーキングスルーなどの画期的な簡易検査方式の導入がある。感染拡大におびえる多くの国は韓国政府に、対応ノウハウと検査キットなど医療物資支援を次々要請している。

 一方、日本では東京を中心に大都市でコロナウイルス感染者が急増し、緊張が走っている。日本ではこのウイルス治療にも適しているとされるインフルエンザ治療薬「アビガン」などの新薬が既に開発され、十分な在庫もあるようだ。新薬開発や医療テクノロジー分野で優れた技術と成果を有し、感染診断キット開発も既に時間の問題だろう。

 だが、万一のため韓国のノウハウに目を向け研究することは大切だ。韓国のウイルス検査や臨床経験で積み上げられた豊富なデータを活用しながら、日本の優れた医療システムと新薬を用いれば、日本国内の感染拡大防止に有効な手だてとなるに違いない。コロナウイルスとの戦いは、もはや1国では抗し切れない状況で、全世界一丸となった取り組みが求められている。

 日韓両国は歴史問題を巡る葛藤のあげく、経済的相互主義と軍事同盟を重視する伝統的な安全保障面で大きく揺らいだ。そこでコロナ局面を契機に、日韓が感染症対策という新分野で世界の安全保障体制構築に貢献するとともに、関係改善のための糸口をも探りうる可能性が見いだせる意義は大きい。

 今後、新型コロナウイルスは、既存インフルエンザのように定着化する危険性が高いとされる。それに備えて、主要国は着々とワクチンや治療薬の開発に力を注いでいる。日韓が得意分野で協力し、ワクチンや治療薬を共同開発したり、さらにかじを切って世界公的医療システムの構築を主導したりすることも不可能な話ではない。

 日韓両国はお互いの感情的な対立をひとまず抑え、「ピンチをチャンスへ」と切り替える賢明な協力体制構築を模索すべきだ。


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