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介護事業所苦境 増す業務負担、支援は不十分

2021年1月28日

 新型コロナウイルスの感染拡大で、介護事業所は厳しい経営を強いられている。感染を恐れて介護サービスの利用を控える高齢者が、増えているからだ。元々、厳しい経営状況とされる介護事業所を長引く新型コロナ禍が直撃。サービスを控える高齢者の認知機能や心身の衰えも深刻で、国の支援が十分でない中、事業所のスタッフは「医療が重要なことは分かるが、介護にも目を向けてほしい。しわ寄せは利用者にいく」と支援の必要性を訴える。

感染拡大防止のためゴーグルなどを着けて、通所リハビリテーションのサービス利用者(右)にリハビリを行う理学療法士の女性(提供)

 「利用者が激減し、困窮する事業所が増えている。一気に事業所の倒産が増えるのではないか」−。東大阪市などで医療・介護事業を行う医療法人の介護福祉事業部長、矢島圭さん(50)は、強い危機感を感じている。

■倒産を懸念

 同法人でも利用控えやキャンセルが急増し、通所サービスだけで昨年4月から現在までに約2700万円の減収に陥った。訪問看護などを含めると減収は約3千万円に膨らむという。さらに、新規利用者分を含めると減収幅はより深刻となる。

 国は介護事業所が感染防止に必要な物品購入費や、人件費などに充てることのできる補助金を設けている。施設の種類によって算定方法は変わるが、通所介護事業所(通常規模型)の場合は最大89万2千円が補助される。

 ただ施設側からすると十分な額とは言えず、矢島さんは「出ないことを考えれば大きいが、一時的な緩和にしかならない」。

 また、民間団体が昨年10〜11月に府内の介護事業所に行ったアンケート(125事業所が回答)でも、約5割の事業所が昨年4〜9月の経営状況について減収が生じたと回答。感染対策など業務量が増えたと答えたのは9割に上った。

 経済的援助を求める声が多く上がる中、矢島さんも「前年度の収入との差額分を補?(ほてん)してほしい。それがあれば持ちこたえられる。介護への支援は明らかに薄い。地域の健康を守る砦(とりで)をなくしてはいけない」と訴える。

■色濃い疲弊

 介護サービスの利用を控えることから、高齢者側の心身にも影響が現れている。「たった1〜2週間でもサービスの利用を休んだ高齢者は、ADL(日常生活動作)が低下し、認知症の進行もみられた」。

 通所リハビリテーションの施設で、利用者の介助に当たる40代の介護課長は、予想以上の体力低下の早さを痛感する。利用者の家族に定期的に電話をかけ、自宅でもできる運動方法を伝えるなど、対応を工夫しているという。

 さらに、クラスター(感染者集団)の発生防止など、施設での感染防止には神経をとがらせなければならない。ウイルスに関する十分な情報が届かず手探りでの対応を余儀なくされ、感染防護具を着けての食事介助や送迎車の消毒など、業務の負担は増大。「普段の状態でもくたくたになるが、今回は倍以上に疲れて動けなくなるほど」と疲弊も色濃い。

 介護従事者に対する周囲の心ない視線にも耐え、心身をすり減らしながら高齢者の健康を支える使命感から仕事に向かう。「政府は介護現場にしっかりと目を向けてほしい」と強く願っている。


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