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「分かる」を聴覚障害児に ネット活用で支援推進

2021年6月28日

 聴覚に障害のある「ろう」児や難聴児らへの教育事業を展開しているNPO法人サイレントボイス(大阪市中央区)が、オンラインなどを活用した支援策を進めている。手話などの支援環境が乏しい地域へのサポートが目的。2022年3月まで大阪府内で実施し、将来的には全国展開を目指している。

オンラインを通じて、聴覚に障害のある児童に学習などのサポートをする「サイレントボイス」のスタッフ=大阪市中央区

 同法人は2017年に設立。ろう児や難聴児らを対象にした、放課後等デイサービス施設「デフアカデミー」(同)の運営などに取り組んでいる。施設では約120人が利用者として登録。1日10人ほどが通っている。

■新型コロナ禍の中で

 ろう児や難聴児への学習支援は、学年によって重点項目が異なる。「言葉の獲得」が求められる小学1〜3年に対し、高学年以降はパソコンや企画力など社会に出てから有用なスキル獲得も目指す。自主的な学習の推奨など「塾」ではない、きめこまやかな支援も行ってきた。

 しかし、昨年から続く新型コロナウイルス禍の影響が大きな変化をもたらした。感染拡大を抑え、施設を閉鎖。利用している児童、生徒との接触が激減した。昨年5月にオンラインに切り替えて再開。すると、先生と話をするだけで泣き出す子どもたちがいた。

 児童らが手話ができない人とコミュニケーションする際、重要となるのは口の動き。しかし、マスク着用のため相手の話を理解しにくくなった。同法人の岡松有香理事は「家族の大半が聞こえる人。大きな孤独感があったようで、久しぶりの“会話”に安心したようだ」と振り返る。

■オンとオフの併用

 同法人では、以前からの懸案事項があった。それは支援の手が多くの人に届かないこと。聴覚障害のある児童らに特化した施設は大阪では唯一だが、通所できる範囲は限られている。これまでは地域に出向く「出張教室」を考えていた。

 さらに新型コロナ禍で行った経験から、オンラインでの活動も可能と判断。オフラインと併用した形で、広範囲の児童らへの支援を取り組むことを決めた。

 7月からのスタートに向けて、大阪府などが推進する「NPO等活動支援によるコロナ禍における社会課題解決事業」に申請。今月30日までインターネットを通じたクラウドファンディングで、自己資金調達に取り組んでいる。同事業では調達額と同額を、村上財団(東京)から提供される仕組みだ。

 実現されれば、施設の利用者とも交流する予定。中学1年の岩井勇輔さん(12)は「友達が広がるようでわくわくする」と笑顔を見せる。プロジェクトを進めている井戸上勝一ディレクターは「子どもたちのコミュニケーションの中で分かる、楽しいという体験が生まれる場所をつくりたい」と支援を呼び掛けている。


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