岡力の「のぞき見雑記帳」

おおきに迎賓館「ふく吉」

2020年12月21日

2大将が旧邸宅で寿司をもてなす

板場で仕込む福田さん(左)と近藤さん

 京都市上京区にある役人町。地名は平安京・禁裏の役人が住んでいたことに由来する。この辺りは昔ながらの景観が残る場所。特に市内で約4万軒ある「町屋」が多く現存し、まるでタイムスリップしたかのような風情が漂う。だが、一方で町屋は維持費がかかり経済的な合理性も悪い事から年間500軒近く取り壊されている。

 そんな中、「町屋を残したい」という思いで今年3月にオープンしたのが「おおきに迎賓館」。手掛けたのは大阪市中央区に本社を構える「株式会社おおきに商店」だ。築120年、「元の姿を残すこと」という前所有者の意志を受け継ぎ改修した複合施設。趣のある館内では四季の移ろいを感じながら宿泊、宴会、食事が楽しめる。

 中でも2人の大将がもてなす料理店「ふく吉」は絶品のお寿司(すし)を提供すると食通の間で話題を呼んでいる。くつろぎの空間でお店を切り盛りするのは福田清嗣さんと近藤洋未さん。共に北新地の名店「鮨(すし)処 平野」で腕を磨いた間柄である。

 宮崎県出身の福田さんは京都、大阪で和食の修業を積み、今から7年前に西天満で前身となる「ふく吉」を開業した。これまでの知識と経験を生かしながらも自身で研究を重ね温故知新の創作料理に挑む。京都へ進出した新生ふく吉のおすすめポイントを聞いたところ「おくどさんが大きく薪(まき)で炊いたお米は本当においしいです。是非、塩むすびを食べてほしい」と話す。

 「人と話すのは苦手ですが作業や調理があれば話せます」と話す近藤さんは愛媛県出身。和食の魅力を海外で発信したいと上海で「鰻処 近藤」を開業しつつ京の板場に立つ。「地の人は伝統、歴史、つながりを重んじるので仲間に入れてくださいという気持ちが強いです(笑)。ご飯に魚が乗っているだけなのに世界で認知されるお寿司はシンプルで最高のツールだと思います。是非、ここから世界へ広めたいですね」。唯一無二のもてなしと2人で奏でる四季折々の味をご堪能あれ。(コラムニスト)

 ■「ふく吉」
 京都市上京区中立賣通黒門東入役人町 おおきに迎賓館、電話075(432)0092。水曜・第1・3木曜定休、完全予約制。昼は午前11時半〜午後2時(ラストオーダー同1時半)、夜は同5時半〜同11時(同午後10時半)。


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