芯のあるしっかりした印象ながら品があってチャーミング。映画やドラマにこの人が出てくると、その存在がなぜか気になるという人も多いのではないだろうか。俳優の門脇麦さんは、とらえどころのないような役にも説得力を持たせる繊細な演技で高く評価されてきた。6月2日公開の映画「渇水」(高橋正弥監督、生田斗真主演)では、2人の子どもを抱えて困窮する母親役に挑んだ。
原作は河林満氏による短編小説で、料金を滞納している利用者の水道停止業務に携わる市職員の葛藤を描き、1990年上期の芥川賞候補にもなった。脚本は約10年前に書かれていたものの、資金集めなどが難航。「孤狼の血」シリーズなどで知られる白石和彌監督がプロデューサーとして関わり、映画化が実現したという。貧困、格差社会、家庭問題…現代に通ずる普遍的なテーマを下敷きにした今作で、社会のセーフティーネットからこぼれ落ちていく登場人物に静かな怒りと悲しみをぎゅっと凝縮させて演じ、存在感を示した門脇さんに話を聞いた。
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映画「渇水」の舞台は雨不足で給水制限が発令される地方都市。演じた小出有希という人物は、夫が蒸発し子ども2人...