亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

枚方市・門真市・寝屋川市

2017年2月11日

白鷺の化身が人々を魅了する

「人か鷺か、幻惑の桃源郷へいざなう」イラスト(C)合間太郎

 堤防を築くのは昔から難工事で、大阪では「茨田堤(まんだつつみ)」の工事が昔話に度々登場する。今回はその工事にかり出された女の話。

 女の名はたま。病にふせっている母との2人暮らしだが、とにかく堤防工事に人出がいるということで飯炊き要員として働いた。ある日、工事の帰り道、血を流している鷺(さぎ)の首をつかんだ男たちに出会う。血を流した鷺の姿があまりにかわいそうで、ちょうど工事の賃金が出た日だったので、その金を全部渡して鷺を買った。たまは「もう人につかまっては駄目よ」と言いながら、鷺を逃がしてやったのだ。

 そして、ようやく堤が完成した。役人は村人たちの慰労のために宴を催すことにし、たまに宴の席で舞を舞えと命じた。たまは舞など舞ったことがないし、そのための着物もないと言うと、着物がなければ裸踊りをせえと言う。たまは美しい女だったので、男たちは大喜び。みんなの前で舞う約束をさせられてしまった。

 その夜、母親に事の次第を説明し、みんなの前で裸になるぐらいなら、いっそ2人して死のうと言い合った。そんなところへ見知らぬ老人が訪ねてきた。老人は「今、家の前で立ち聞きしました。明日、この着物を着れば、着物が勝手に踊らせてくれますよ」と言う。

 次の日、茨田堤のまわりには何百人もの人が集まり、はなやいだ雰囲気の中、いよいよたまが登場する。そこには純白の気高く光沢を放つ着物を着た、それは美しい姿があった。その舞はまるで白鷺が優雅に舞うかのごとく、たまはすべての人を魅了した…。

 この話が評判となり、都の高貴な方から声がかかり、たまはその方の妻となって母親も手厚く看護を受け、病気も回復した。そうして2人は生涯幸せに暮らしたという。

 最近ではあまり聞かれなくなった、心やさしい者が報われる、ほっとするお話。

 (日本妖怪研究所所長)