2016年10月20日

里クリエーター 第5部「里食」(5)

 「料理を食べに、多くの人に日野郡を訪れてもらいたい。お客さまに満足してもらえるようにもてなしたい」。佐野咲百合さん(43)=鳥取県日野町根雨=は「たたら」をコンセプトにしたランチ作りに父親と取り組む。官民でつくる日野郡広域交流促進協議会が、郡内の活性化や交流人口の拡大を目指して打ち出したグルメプロジェクトの一環だ。

 「空気を出すように生地をこねて。しわのない団子になるように」。日野町根雨のそば道場「たたらや」。店主の安達幸博さん(64)が、娘の佐野さんを厳しく指導する。佐野さんは「菊ねり」という手法で黙々と生地を押す。力が要る。「これはしんどいわ」。思わず声が出た。

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 同協議会が開発を進めているランチの名称は「日野郡3町三色たたらんち」。佐野さんは安達さんから試作品の調理を頼まれ、開発に関わるようになった。鉄板を使って炎と音で料理を演出することや、郡内の旬の野菜を用いることが共通のルール。「決められたルールの中で、いかに表現できるかを求められている。やるならとことんやりたい」と意気込む。

 根雨で育った。高校卒業後、広島の専門学校でフラワーアレンジメントを学び、広島のホテルに就職。ブライダル部門の花係として会場の花の装飾などを手掛けながら、どんな演出が顧客満足度を高めるか、プロデュースのノウハウも学んだ。

 職場結婚した夫とともに1997年、「自然豊かで情緒もある根雨で子育てをしたい」と移住した。花屋と喫茶店を営み、料理の腕を振るっていたこともある。

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 日野郡3町三色たたらんちには「和、洋、中」の三つのジャンルが設けられている。佐野さんは和食部門に挑戦している。献立に取り入れた「鉄板そば」は、日南町産のトマトジュースをそばに練り込んだ和の焼きそば。酸味の効いた味わいに特色がある。

 錦糸卵と牛しぐれの色合いに細かく気を配ったり、じゃぶ汁や大山おこわ、そば刺しなどを含めたランチ全体の味のバランスを考えたり。料理に合った器、食事のイメージが膨らむ品書きなど、見せ方やもてなしにも工夫を凝らす。ホテル勤務時代の経験も生きている。

 「お客さまにどう満足していただくかを考えるプロデュースが楽しい」。子育て、家事、自身が立ち上げた劇団の活動と、何足ものわらじを履きながら、オリジナルのランチ作りに力を注ぐ。「料理だけではなく、私に会いに来ていただけるようにもてなしたい」と、ふるさとのにぎわいを思いながら厨房(ちゅうぼう)に立つ。(高塚直人)

(第5部おわり)

 ミニクリップ

 日野郡3町三色たたらんち かつて日野郡で営まれていた製鉄法「たたら」をテーマに、日野郡広域交流促進協議会(宮崎正男会長)が開発を進めている。10月22日から11月末にかけて、「そば道場たたらや」など日野郡の5店舗で各店1日10食を特別価格500円(通常価格980円~1200円)でテスト販売する。