【ネットオリジナル】昆虫食、マリトッツォ、名店の味… おもしろ自販機、鳥取でも増殖中

 

 自動販売機といえば、飲み物を売っているイメージが強いが、近年はユニークな商品を取りそろえる自販機がブームとなっている。鳥取市内でも昆虫食やスイーツ、名店の味など、話題を集める自販機がここ数年で一気に増えた。それぞれの味を確かめながら、なぜ増殖しているのか探ってみた。

■さくさく食感のコオロギ

 鳥取のメインストリート、本通り商店街の一角に自販機ショップ「だでPON商店」(鳥取市末広温泉町)がある。オーナーは近くで飲食店「サニバル」を経営する岸本皇治さん。コロナ禍で非接触型のビジネスを始めようと、化粧品店の空き店舗を活用し、2022年7月にオープンした。

昆虫食などを取り扱う「だでPON商店」

 

 いくつか自販機があるが、目玉は鳥取では珍しい「昆虫食」。話題性を重視し、面白半分で導入した。岸本さんによると利用は夜が多く、「お酒を飲んだ後にふらっと寄ってみたり、スナックのママへのお土産で買ってみたりするケースが多いのかも」と分析する。中には市外からわざわざ購入しに来る客もおり、商品が売り切れることもしばしばあるという。

 昆虫食は10種類ほど取り扱っている。特に人気を集めるのは「アーモンドコオロギ」(600円)だ。ピーナツと小魚のようにコオロギがそのままの姿で入っている。

人気の「アーモンドコオロギ」

 

 昆虫が苦手な記者はコオロギを口に入れたが、かむのに相当な勇気がいった。しかししょうゆ味で甘辛く仕上がっており、食感はさくさく。甲殻類に近い味わいで、イメージよりもおいしかった。

さくさく食感がやみつきに?

 

 岸本さんは「観光客も地元の人も本通りに立ち寄るきっかけになればうれしい。昆虫食で地域の活性化に貢献できたら」と意気込んでいた。

■パンの食感とクリームの相性抜群

 パンなど製造小売りを手がける「パン工房大地の恵み」(鳥取市国府町宮下)。店先に設置した自販機では自慢のスイーツのほか、陶器やオリジナルTシャツなど、地域の特産品を販売している。

「大地の恵み」前にある地元特産品を扱う自販機

 

 塩見剛史社長によると、コロナ禍の影響で店舗への直接の来店者が減少。イベントでの集客も難しい状況が続く中で新たな販売方法を模索した。「容器さえあれば何でも売れる」と、2021年8月に自販機を設置した。

 スイーツは5種類で地元の食材を使用。自販機専用で2種類の「クロワッサンマリトッツォ」と「チーズスイートポテト」を用意するほか、スコーンとラスクもある。2022年1月には近くの宇倍神社が初詣でにぎわった影響で、最高収益を記録。自販機の前に行列ができるほどだったという。

 人気が高いクロワッサンマリトッツォの大山みどり&宇治産抹茶味(300円)を食べてみた。パンの食感は外がぱりっと、中がふわっとしており、ほどよい甘さでビターな抹茶クリームとの相性が抜群だった。

人気の「クロワッサンマリトッツォ」

 

 スイーツのほか、鳥取因幡焼の一輪挿しや季節によっては地域で採れたブドウを販売している。塩見社長は「なるべく地域のPRにつながる商品を今後も導入していきたい」と抱負を語った。

陶器も販売している

 

■肉のうま味存分に

 全国のグルメ名店の味が気軽に楽しめる自販機が、鳥取大にほど近い鳥取市湖山町北2丁目の駐車場に2022年12月から設置されている。一見ひっそりとした場所だが、周囲はアパートが立ち並び、学生らがよく通行している場所だ。

鳥取大近くに設置されている「ど冷(ひ)えもん」

 

 設置したのは金居商店(鳥取市本町1丁目)。2022年7月には、鳥取市賀露町西3丁目の地場産プラザ「わったいな」に、首都圏などの有名店のラーメンが手軽に購入できる自販機を設置しており、今回が第2弾となった。

 金居洋子社長によると、コロナ禍で事務機の供給が滞るなど本業に影響が出る中、食品を扱う自販機の企画を考えた。第2弾としてラーメンに限らず幅広いジャンルのグルメを取り扱う「ど冷(ひ)えもん」という自販機を導入。名店の味を気軽に学生に楽しんでもらおうと自社が所有する鳥大近くの駐車場に置いた。

 若い世代から人気を集める「二郎系ラーメン」の「平田の哲二郎」と、「味の牛たん喜助」の「徳用牛タン」がよく売れているという。

人気は有名店の「二郎系ラーメン」と「牛タン」

 

 今回は徳用牛タン(1400円)を購入。塩、タレの2種類が冷凍で100グラムずつ入っており、焼いて食べた。どちらの味も肉のうま味を存分に味わえた。

牛タンは冷凍パックで販売

 

 金居社長は「今後は『牛骨ラーメン』など、地元のグルメを導入できたら面白い」と展望を語った。

■コロナ禍で食品自販機が活況

 3事業者ともコロナ禍を契機にユニークな自販機の導入を始めていたが、全国的にも同じような流れができている。

 日本自動販売システム機会工業会(東京都)によると、食品自販機の普及台数はコロナ禍前の2019年が7万1900台。20年は7万台と減少したが、21年は7万2800台、22年は7万7700台と、右肩上がりで増え続けている。

 日本自動販売システム機会工業会は増加した理由について、冷凍食品自販機が保存技術の進歩で、多様な商品を取り扱える▽コロナ禍で非接触ニーズが高まった▽家庭で気軽に専門店の味を楽しめることからファミリー層での利用が増えた-の3点を挙げた。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられ、社会活動はコロナ禍前に戻りつつあるが、非接触型のニーズはこれからも続いていくだろう。

 個人的には、兵庫県香美町小代区で今も稼働中のうどん自販機が印象深い。スキー取材の帰りに食べた味は格別だった。無人だが温かみがある。全国では、ラーメンのつゆ、かばん、果実の生絞り自販機をはじめ、ふるさと納税で返礼品が出る自販機と多種に及ぶ。今後も自販機の進化に注目していきたい。

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