金井啓子の伴走で伴奏

諦めていた要介護の母の遠出

2021年11月29日

レンタル機器を使えば可能に

 東京の自宅で1人暮らしをしていた母が、昨春から認知症のため介護が必要となり、デイケアに通った後、病院と介護老人保健施設を経て、今年7月からは小規模多機能と呼ばれる高齢者施設でお世話になっていることは、これまでにも書いた。

 この施設には、自宅から通所したり時々泊まる人もいれば、母のように長期間にわたって連泊し時々自宅に戻る人もいる。

 コロナ禍で面会すらできない時期もあり、母の一時外泊の機会は限られていたが、7月と11月に1泊ずつ自宅に戻れた。

 7月の外泊時には、弟の車に母を乗せてお墓参りをした。墓地の通路は車椅子で通ることができたが、最大の難関は母を車椅子から車の座席に移すことだった。母はかなり小さくて軽いのだが、弟も私もうまく対応できず腰を痛めそうだった。

 だから、弟の車に母を乗せることはもう無理だと諦め、11月の一時外泊では施設の車で自宅に送迎してもらった。小さいサイズの車だが、後ろから車いすごと乗れるタイプである。

 母の姉妹は遠くに住んでいるため、母に会いたくてもわざわざ東京まで来てもらうことは難しい。栃木にあるお墓に母が車で行ければ再会が果たせそうだが、弟の車に乗せることは繰り返せそうもない。かといって、東京と栃木の間を介護タクシーで往復するのはあまりに遠い。どうにかならないものかと悩んだ時に、思い出したのが施設からの送迎に使われていた車だった。

 当初は施設から車を借りられないかなどと考えていたが、ふと思いついてレンタカー会社のサイトを調べたら、車椅子ごと乗れる車も借りられることがわかった。特殊な技術が必要だろうかと思ったが、使い方もそれほど難しくないらしい。母の施設に相談すると、遠出をするならば日常生活に使っているのとは別のタイプの車椅子もレンタルすることを勧められた。車の揺れに対応したり背もたれが大きかったりリクライニングしたり、という機能があるらしい。

 諦めかけていた再度のお墓参りに現実味が帯びてきた。高齢の三姉妹の再会はお互いにとっていい刺激になるはずだ。意外に道は開けるものだというのが今の実感だ。母の行動には制限が多くなってきた。でも、「これをやってあげたい」と思ったら、諦めずに貪欲にダメ元で方法を探そうとあらためて思っている。諦めなければいけないことも多いからこそ、なおさらである。

 (近畿大学総合社会学部教授)



サイト内検索