金井啓子の伴走で伴奏

朝ドラと星空を見て思う

2021年12月27日

私たちは何の後に続くのか

 冬の夜空に輝く星といえばオリオン星座が有名だ。中でもひときわ大きく光るのがペテルギウス。「冬の大六角」を形成する一等星である。この大六角には、おうし座の「α(アルファ)星」と呼ばれる明るい星があり、別名「アルデバラン」と呼ばれている。この名前には「後に続くもの」という意味がある。

 さて、NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』は戦前から戦後を生きた女性の生涯と共に、その子どもたちの生き方を描いたものだ。今回の朝ドラはヒロイン1人にスポットを当てたものではなく、その子ども、そして孫と3代続くという話になっている。NHKにしては斬新な構成だ。

 私も『カムカム』を毎日見ている。いまは2人目のヒロインに交代したばかりだが、1人目の「安子」の生涯は激烈だった。共に若くして結婚した夫は学徒出陣により戦死。安子は夫の遺志を継いで誰とでも仲良くなれる世界を信じ、ラジオ講座を通じて英会話を独学する。だが夫を失った安子は、あるきっかけで今度は娘と別れることになり、自身は渡米してしまう。若いときから英語が好きだった私も、安子が勉強する姿と昔の自分とを重ね合わせることがあった。

 ところで、この物語は戦争の悲惨さを戦闘場面で伝えるのではなく、戦争の渦中で生きた女性を通じて描いている。直接的な戦いのシーンではなく、間接的に戦争の無意味さ、ひどさをドラマならではの手法で伝えている。NHKの報道が何かと政府に忖度(そんたく)していると言われる中、ドラマ制作のスタッフは別の方法で現代社会を暗に批判していると見るのは考えすぎだろうか。

 『カムカム』の主題歌は「アルデバラン」という曲だ。ソウルフルな歌詞とメロディーが聴く人の心を捉えて離さない。アルデバランが「後に続くもの」の意味なら、この先『カムカム』の2代目、3代目のヒロインたちも安子の願いを継いでいくのだろうと想像する。国籍の違いや差別を乗り越え、世界の誰とでも仲良くなれる社会を築く道を歩もうとするのではないだろうか。

 大都会で満点の冬の夜空を満喫するのは難しい。ただ、ペテルギウスやアルデバランといった明るい星は都会でも見える。私たちは何に続き、何を伝えるべきなのか。安寧への道か、それとも混沌(こんとん)を生む種か。星々を眺めながら、こんな思索も時にはいい。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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