金井啓子の伴走で伴奏

集まった約16万筆の署名

2022年5月30日

民意の否定は民主主義の否定

 夢洲(ゆめしま)のカジノを含む統合型リゾート(IR)。大阪府は申請を済ませており、国の認定を待っている状況だ。

 一方、その是非は住民で決めさせてほしいと、市民団体が住民投票条例の制定を求める署名活動を大阪府全域で3月末に始めた。最終日の5月25日までに約15万7千筆もの署名が集まったが、無効な署名が混じっている可能性もあり最終的な集計はまだ先になる。集計後、直接請求に必要な約14万6千筆以上の署名があれば選挙管理委員会に名簿が提出され、吉村洋文大阪府知事を通じて大阪府議会に条例制定の可否が委ねられる。

 私は2018年6月の本紙コラムで、IR・カジノの是非は住民投票で決めるべきだと訴えた。その訴えは市民団体の活動によって実現し、住民投票も夢ではなくなった。

 だが府議会の最大会派である大阪維新の会も吉村知事もIR・カジノの推進派だ。仮に規定の署名が集まって府議会に直接請求をしても否決されるかもしれない。26日の記者会見で署名活動の結果を問われた松井一郎大阪市長も、「(IR)の手続きになんらかの影響を与えるということにはならない」と住民投票の実施には否定的だった。

 だが、集まった16万人近い署名は大きな民意である。その民意を無視していいはずはない。

 吉村知事と松井市長、そして大阪維新は「IR・カジノの実現は選挙公約であり民意に支持された」と主張しており、今更止めることなど論外だと言いたげだ。だが、夢洲では土壌汚染や液状化のリスクが見つかり、対策費として約790億円の公費負担が発生する。その負担もさらに増えることが懸念されている。

 いくら選挙の公約を民意が支持したからといって、後になって不安材料が出てくれば、「話が違うではないか」という新しい民意が出てきて当然だ。民意は固定されたものではなく状況に応じて変化する。今回、市民団体が集めた多くの署名も新たな民意である以上、府議会も頭から否定せず真摯(しんし)に対応してほしい。

 吉村知事と松井市長も民意と民主主義の大切さを常々訴えている。大阪維新も同様だ。今回の署名活動で直接請求に必要な署名が集まれば、それは無視できない民意である。まさか知事と市長、大阪維新が無視することはないと信じたい。もしすれば、彼らが言う「民意」と「民主主義」は底が知れている。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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