澪標 ―みおつくし―

DV防止−男性たちのアクションが鍵

多賀 太
一般社団法人ホワイトリボンキャンペーン・ジャパン共同代表/関西大学教授
2019年8月5日

 内閣府が2017年に行った「男女間における暴力に関する調査」によれば、結婚経験のある20歳以上の女性のうち、21人に1人が、夫からのDV(ドメスティックバイオレンス)で「命の危険を感じた」経験があります。また、7人に1人が、夫から暴力を受けたことが「何度もあった」と答えています。

 私が仲間たちと行っているホワイトリボンキャンペーン(WRC)は、DVなどの女性に対する暴力の防止を、男性から男性に対して呼びかける世界的啓発運動です。1991年にカナダの男性たちが始めたこの活動は、今では世界50カ国以上に広がっています。

 私たちが、2012年に日本でWRCの活動を本格的に開始して以来、性別を問わず多くの方々から賛同の声をいただいています。

 しかし同時に、悪いのは暴力を振るう男性であって、暴力を振るわない男性には関係ないのではないか、といった声も聞かれます。実は私も、以前はそう思っていました。「男性から女性への暴力」と聞くと、自分は暴力を振るっていないのに、あたかも加害者の側に立たされて責められているような嫌な気分になるので、この問題に関わることを避けていたのです。

 こうした私の考えを大きく変えたのが、WRCの創始者であるマイケル・カウフマンの次の一言でした。

 「暴力を振るわない男性が、暴力を振るう男性の代わりに罪の意識を感じる必要はない。しかし、女性への暴力をなくすために、あなたにもできることがあるのに何もしていないのだとすれば、できることから始めようではないか」

 確かにDVには、加害者と被害者の間で起こる個人的な問題という側面があります。しかし同時に、多くの人々によるDV問題への無関心や暴力容認の態度が、たくさんのDV被害を放置してきたのだとすれば、これは、決して加害者個人だけの問題ではなく、社会全体が責任をもってその解決に取り組むべき問題です。

 私たちは、男性たちに次のことを呼びかけています。まずは、DV問題に関心を持ってください。冒頭で紹介したような統計を知るだけでも、DVの防止と解決の必要性を意識するきっかけになるでしょう。

 暴力は絶対に許されないという考えを広めることも重要です。怒りや不安を表現したり問題を解決したりする手段として、暴力を選ぶことなく、他の平和的な方法を周りの人々と一緒に考え、それを若い世代に伝えていくことができます。

 暴力の被害者を支援することもできます。もし被害を打ち明けられたら、被害を軽んじたり、被害者を責めたりせず、傾聴してあげてください。相談機関を知っておいて紹介してあげることもできます。被害者の保護や経済的自立を支援する団体に寄付することも立派な被害者支援です。

 人口の約半数を占める男性が、自分は暴力を振わないから関係ないとして沈黙を続けるのではなく、暴力反対の声を上げ、その解決に向けてアクションを起こせば、社会は大きく変わるはずです。

 (大阪府吹田市、たが・ふとし)



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