澪標 ―みおつくし―

「白」の風景

朴 守賢
作曲家
2021年9月14日

 皆さんは「白」にどんなイメージをお持ちでしょうか? 私は「白」を曲名に付すことが多いです。《白の月に舞う》《白の草原にまつわる物語》《白の小人村》《ミルキー・ソナチネ》等、これらの作品は編成もスタイルもバラバラですが、「白シリーズ」として一つの概念を共有しています。それを一言で表せば、「生命の誕生」とでも言えるでしょう。私は「白」を「魂の原風景、前世や胎児の記憶」をイメージする言葉として、曲名に使用しています。

 私の創作テーマ「音楽=生命=時間」について、関連する自作品のエピソードを交えてお話する今コラムの第5回(最終回)では、テーマの核心に触れるこの白シリーズから《白の御神樂(みかぐら)》(2012年作曲、ソプラノ・コントラバス、未出版)を取り上げます。

 これまでコラム内で作品の内容については触れてきませんでしたが、今回は少しご紹介します。子宮内の音を表すコントラバスがゆったりと時を刻み、母なる声のソプラノが母音から次第に「うまれる」と歌い始めます。やがて少しずつ差し込む現世の光が高潮を迎えたところで、「生まれくる愛」という意味のハングルを歌います。また、音楽の構造や内容から過去生、悠久、アジア、平安などのイメージも想起され、「御神樂」を付しました。

 実は、作曲前年の秋、夢の中で「白のお告げ」を受けました。真っ白な世界に家族がたたずんでいます。旅立った父もいます。白の空間を奥に進むと、自分の母ともパートナー(妻)ともつかない女性が赤子を抱いています。そして、白い後光が次第に明るさを増し、トンネルを抜けるように光があふれ…目覚めました。これが、私たち夫婦に赤ちゃんが来てくれたと明確に確信した瞬間です(産科での視認よりも早く確信したのです)! その翌年に無事息子が予定日ドンピシャに誕生、時近くして産声を上げた《白の御神樂(みかぐら)》は、息子にささげられました。何度も「音楽=生命=時間」と創作テーマを書いてきましたが、明確に意識し始めたのはこの時からです。

 それぞれの生命の誕生には(私が言うところの)白のお告げがあり、物語があり、神楽で祝福されていると思うと、そのどれもがとてもいとおしく思えます。それでこそ、その終焉(しゅうえん)も同じく尊重され、美しい円環となります。今後も自分なりに音楽、生命、時間の美しさを追求していこうと思います。

 5楽章の生命の交響コラムを書くつもりで昨年より断続的に執筆させていただきました。読者の皆さまありがとうございました。

 最後は「コーダ(終結部)」としてお知らせを。第2回でも少し書きましたが、日本センチュリー交響楽団のプロジェクトにより、葬儀セレモニー用の音楽として作曲した弦楽四重奏《環―めぐり―》のヴァイオリン・ピアノ版が、2021年11月12日(金)「センチュリー豊中名曲シリーズ プレパフォーマンス&トーク」で初演されます(豊中市立文化芸術センター大ホールロビーにて午前11時開演、入場無料、先着30人、後日映像配信)。また、コロナの影響で企画が流動的ですが、「白シリーズ」の最新作《白の回生》の作曲も計画中です。

 それでは、音楽が響くどこかでまた皆さんとご一緒できる日を楽しみに、筆を置きます。

 (大阪市天王寺区、パク・スヒョン)



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