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出前で料理を頼みつつ、会員らが会話を楽しめる環境を整えた大崎社長(左から2人目)=大阪市中央区のコナイト |
「誰かの命を危険にさらすくらいなら、閉店したほうがましだ」−。シェアオフィス運営会社「カエル」(大阪市中央区)が、ビジネス関係者の交流を図るため、昨年開店したバー「コナイト」(同)。新型コロナウイルスが流行する中、無症状でも飛沫(ひまつ)感染の可能性があるとの報道に、大崎弘子社長(44)は今年3月、自主的に臨時休業を決めた。
「会話を促そうと店をオープンしたのに、それができないのは本末転倒」。開設の目的に立ち返って熟慮した結果だった。
ようやく経営が軌道に乗り始めるさなかの決断だったが、この「原点に立ち返る」行動が変革を促し、より持続可能な道を切り開くことになる。
臨時休業後、すぐに3密対策に着手。換気用の窓の設置工事を行い、席の配置を見直すと、完全会員制に移行して来店者を把握できるようにした。
運営の仕組みも試行錯誤。追求したのは、「その場にいる人たちの何げない会話から、自分が抱えている問題が解決する。そんな居心地のいい場所」(大崎社長)。バーの体裁に執着しなかった。
くつろげる雰囲気づくりを重視しつつ、営業時間は週3日、1日3時間と約6割減らし、飲食をセルフサービス化。ふらっと立ち寄った人同士が出会う確率を高めるとともに、人件費などを削減した。
ただ、飲食の売り上げが減る分、月額の会費が経営の存続を左右する。
運営体制を移行して会員が離れれば死活問題だったが、店を再開した5カ月後に支えとなったのは、ほかならぬ会員たちだった。大半が継続し、店の収益になるように飲食する姿も見られた。
常連の一人でIT企業経営の佐田幸宏社長(36)は「自分やほかの会員にとって、安心していられる場所。みんなで守っていきたい」と笑顔を見せる。
飲食のセルフサービス化に伴い、店内への持ち込みや出前の注文も認めた。それが、近隣の飲食店の売り上げにも貢献している。
近隣でイタリア料理を営む店長(40)は「歩いて来られる距離で、効率よく運営できる」と受注を喜ぶ。コナイトの客は欲しい料理が食べられ、提供する飲食店も潤う。ご近所同士で支え合う“小さな経済圏”が誕生したともいえる。
店舗の価値を追求し、足りない物は補い合う。変革を遂げた経営で難局に挑む大崎社長はこう力を込める。「新型コロナ禍だからこそできることがある。私は諦めない」
ピンチをチャンスに変える行動を起こせるか。多くの企業が今、岐路に立たされている。
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