大人の社会見学

 大人にしか味わえない、大人だからこそ学びたい施設を行く−。それを「大人の社会見学」と呼ぶ。食品工場や伝統産業資料室、工業遺産など関西有数のスポットを写真に収めながら、地域との密着や歴史、魅力を取り上げていく。

百舌鳥古墳群 (堺市)

2020年4月23日

大阪初の世界遺産

日本最大の前方後円墳、仁徳天皇陵の拝所
仁徳天皇陵古墳近くのいたすけ古墳から出土した「衝角付冑(かぶと)型埴輪」のレプリカ。大仙公園内の堺市博物館入り口にあり、同館では関連資料が多数展示されている(5月6日まで閉館中)
花茶碗特製の「古墳の森カレー」。ゆでたブロッコリーで森を表現し、隠し味にはイチジクを使っている

 2025年大阪・関西万博誘致と時を同じくして昨年、大阪府では初めてとなる百舌鳥(もず)・古市古墳群の世界遺産登録がかなった。このうち、堺市の百舌鳥古墳群には、日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵古墳」をはじめ、大小100以上の古墳があったとされ、権力者がその力を見せつけるために築き上げたモニュメントは、今もなお多くの謎に包まれている。一方で、「鍵穴型」という愛らしいルックスが受け、地元では特産のグルメやグッズも人気だ。話題に触れようと一帯を歩いた。

 堺市北部を中心に広がる百舌鳥古墳群。前方後円墳や円墳、方墳、帆立貝形墳と形や大きさも多様で、中でも5世紀中頃に築かれたとされる全長486メートルの仁徳天皇陵古墳(大仙陵古墳)は、秦始皇帝墓(中国)、クフ王ピラミッド(エジプト)と並ぶ世界三大墳墓の一つに数えられる。

■身近な存在

 一帯では見学コースが整備され、機運の高まりがうかがえる。履中天皇陵古墳近くに1歳と4歳の2児と遊びに来ていた会社員女性は「観光なのか取材なのか、ヘリコプターが頻繁に飛ぶようになった」と変化を感じている。ただ、登録については「身近すぎてあまりよく分からない」と話し、それほど市民にとってはなじみ深い存在なのだ。

 散策の手がかりとして、仁徳陵に近い大仙公園内の堺市博物館では、多くの出土品から当時の暮らしや古墳築造を支えた技術を知ることができる。仮想現実(VR)技術を用いた上空300メートルからの眺めや、CGで古墳内部の石室を再現した映像で疑似体験することも可能だ(5月6日まで休館中)。

■古墳カレー

 偉業に向け、地元も機運醸成に一役買ってきた。

 大仙陵古墳にほど近い定食屋「花茶碗(わん)」では、ライスを鍵穴型に盛り、周囲にルーを流し込んで濠(ごう)を表現した「古墳カレー」を開発。11年には商標登録も果たした。店主の中屋麗子さん(73)は「世界遺産の盛り上がりで客が5〜6倍になった」と驚きを隠せない。

 ルーにはリンゴやバナナを溶け込ませ、特に古市古墳群がある羽曳野市特産のイチジクは皮ごと炊いてコクを出している。テレビ番組の企画で上空を飛んだ経験をヒントにした「古墳の森カレー」は、ゆでたブロッコリーを森に見立て、こんもりと盛り付けた。

 中屋さんは「(新型コロナウイルスの感染拡大に伴い)今は博物館や市役所の展望台も閉まっている。遠くから来てくれる人に、せめてうちのカレーを食べてもらいたい」と人懐っこい笑顔で出迎えの準備をしている。

【百舌鳥・古市古墳群】 堺市と羽曳野市、藤井寺市にまたがる4世紀後半〜6世紀前半に築かれた古墳群。日本最大の前方後円墳で、全長486メートルの仁徳天皇陵古墳(大仙陵古墳)や、2番目の規模となる同425メートルの応神天皇陵古墳(誉田御廟山(ごんだごびょうやま)古墳)などが現存する。昨年7月、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で審査され、登録が正式決定。これまで文部科学省の文化審議会では13、15、16年と国内推薦を見送られており、“4度目の正直”となった。世界遺産には49基が登録されている。


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