ボサノバ歌手 結美のボア・ヴィアージェン

 関西を拠点に活躍するボサノバ歌手の結美さん(27)。ライブ活動では清涼感ある歌声で多くのファンを引き付ける。昨年は発祥の地ブラジルで演奏を披露し、ボサノバ音楽の奥深さも体感した。「悲しみを包み込むような明るさが好き」と語る結美さん。ボサノバへの思いを本紙に寄稿した。5回連載。

ボサノバとの出会い   

2014年9月4日

「三月の雨」に背中押され

「心の中にすっと入ってきた」。ボサノバに出会い、歌い続ける結美さん=大阪市中央区のジャズバー「コモド」

 やわらかくリズムを刻むギター、つぶやくようなピアノの音、彼女の弾むような軽やかな声。そして、ちゃめっ気がありながらも包み込むような彼の声。2人は笑い声をあげながら歌う。男女のデュエットってこんなにも美しいのか。

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 16歳の春。高校にも行かず、アルバイトをしながら、ギターを弾いて好きなメロディーを口ずさむ日々。気持ちが安らぐのは音楽と接している時だけだった。

 周りの人があまり聴いていない音楽が聴きたい。あまのじゃくだった私が選んだ一枚のCDは「イパネマの娘」で有名なアントニオ・カルロス・ジョビンの曲を集めたもの。その最後入っていたのが彼自身とブラジルの国民的歌手エリス・レジーナが歌う「三月の雨」だった。

 悲しく沈んだ時は心を温めてくれた。うれしい時は寄り添って背中を押してくれた。朝でも、夜でも、どんな時でも心の中にすっと入ってくる。18歳まで一日も聞かない日は無かったと思う。大げさかもしれないけれど、この一曲が私の日々の原動力になっていた。

 ブラジルの3月は日本と反対の季節。カーニバルが終わり、たくさんの魅力がある夏に別れを告げる頃。日本も夏の終わりは物悲しい気分になるけれど、遠く離れたブラジルも同じ。夏の終わりの雨は優しく、そんな思いも包んでいくのだろう。

 まったく分からないポルトガル語にふり仮名をふって、ギターを弾きながら歌ってみる。聴いていたおばあちゃんは、ポルトガル語のコラサォン(心)という言葉に対して「ヨッコイサ!」と合いの手を入れてくれた。

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 あれから10年。私はボサノバを歌い続けている。そして、音楽は言葉を超えて人の心に伝わるものだと教えてくれたあの曲のふるさと、ブラジルへとついに旅立ったのだった。

(ボサノバ歌手)(月1回掲載)
 メモ 結美さんは毎週火曜日、大阪市中央区東心斎橋1丁目のジャズバー「コモド」でライブ活動をしている。電話06(6258)8088。
 ◆結美(ゆうみ) 本名・山本結美。1987年、兵庫県生まれ。13歳でビートルズを聴きギターを始める。16歳でボサノバと出会い、19歳からライブ活動をスタート。2012年には兵庫県立美術館でボサノバレクチャーコンサートを開いた。13年にボサノバ発祥の国・ブラジルへ、その魅力を肌で感じ帰国した。現在、関西を中心に活動する。
 祖母は鳥取県赤碕町出身で、祖母のふるさとでのコンサートが夢。連載のタイトル『ボア・ヴィアージェン』はポルトガル語で「良い旅を」の意味。

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