大阪発 羅針盤

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タイと日本 重なる観光戦略

2016年5月16日

インバウンド誘致に熱

タイの観光戦略を語るユッタサック総裁(左)=12日、大阪市内

 海外から自国を訪れる外国人観光客「インバウンド」をめぐって、東南アジアのタイが日本市場に食指を動かしている。日本との修好130周年を来年に控えてタイ政府の観光庁トップが来阪し、外国人客を地方に誘う戦略を明かした。その取り組みは観光立国を目指す日本に不可欠な戦略と重なり、インバウンドの誘致合戦は熱を帯びている。

 タイ観光庁総裁に昨年9月に就任したユッタサック・スパソーン氏(50)は日本留学の経験があり、慶応大を卒業した知日派だ。在日事務所を構える大阪市内で開いた12日の記者懇談会を通して示した観光戦略のアイテムが「道の駅」だった。

■“物”と“質”

 タイはもともと、日本で始まった地域振興策の「一村一品運動」を取り入れた経緯がある。ユッタサック氏は「地方に“物”がいっぱいあるが、提供する場所がない」としてタイ全土で道の駅を140カ所整備する意向を説明した。道の駅をガソリンスタンドに併設し、さらに日本でブームの「B級グルメ」を集める案も検討している。

 背景には首都のバンコクやココナツアイランドのサムイ島など特定の都市・観光地に集中する外国人客の目を地方に向ける狙いがあり、その試みが「“質”の良さの提供につながり、収入を得ていく」(ユッタサック氏)ことに通じるというわけだ。

 こうした地方拡散の戦略は、訪日客増加が「一過性」に終わる懸念を抱える日本にも不可欠なテーマだ。関西経済同友会が香川県の讃岐うどん手打ち体験や富山県の雪化粧した山あいを巡るクルーズに着目し、中四国・北陸とのネットワーク化を提言したのもそのためだ。

■ウィンウィン

 タイ観光庁によると、昨年の外国人客数は2988万人だった。このうち日本人は138万人で、今年は142万人に押し上げる計画だが、逆に、日本側も「親日国」とされるタイ市場への浸透に余念がない。

 日本観光立国推進協会(大阪市)はタイのテレビ局に協力して8月から日本紹介コーナーをスタートすると発表。16日には番組キャスターを大阪に迎えて取材先発掘のための説明会を開く。現地のテレビ番組を通してタイからの誘客を図るのが狙いだ。このほか、近年は石川県、千葉県、仙台市、名古屋市などがタイでの観光PRに取り組んでいる。

 「どちらが勝つかではなく相互交流による“ウィンウィン”の関係が必要だ」とはユッタサック氏の弁。インバウンド誘致合戦は自国の産業振興を図る切磋琢磨(せっさたくま)の機会である。