大阪発 羅針盤

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農産物直売実証店舗と新流通システム 

2016年6月30日

消費者の要望に応える 農業の裾野広げたい

買い物客でにぎわった鳥取県内JAグループの実証店舗=25日、兵庫県西宮市

 鳥取県内のJAグループが、兵庫県西宮市の団地内に農産物直売の実証店舗をオープンさせた。毎月1回、週末の2日間のみ開店し、消費者の声を聞きながら関西圏での販売拠点となる常設店舗を開設する考えだ。「新しい流通のスタイルができれば」とJA。何を目指そうとしているのか。

 実証店舗「まるごと鳥取市場」は西宮市枝川町の浜甲子園団地中央集会所に開設した。来年2月までの期間限定。県内の3JAが持ち回りで野菜や果物、加工品を販売する。なぜ、団地なのか。

 県内JAは大阪ではこれまで、大手スーパーの一角を借りて出店してきた。インショップ方式と言われる。不特定多数が相手で、売れたか売れないかだ。どんな品物が欲しいか、など消費者の要望は聞けない。何より、JA側が自由に産物を持って行けない。

 現在、全国のJAで関東や関西に直売所を出店する動きがあるが、運営は難しい。人件費や賃料が高く、輸送費もかかる。それだけでは黒字になりにくいということだ。

■気軽に買って

 農産物は、市場を経由してスーパーに卸す。同じ物を大量に持って行き、仲買が分けて、スーパーが必要な物を店頭に並べる。市場流通の流れがあり、それに対抗するのはハードルが高い。

 その中で何を検証するのか。JA全農とっとりの増田卓也園芸部長(56)は「気軽に買ってもらえるシステムがつくれないか、知恵を出しながら探ってみたい」と言う。

 人が集まる物、売れる物を「同じ所」に出して、時間をかけて要望を聞いていく。曲がったキュウリで市場出荷できないが、「曲がっているから、いくらでもいいよ」と対面販売する。タブレットで新米の時期にフェアを実施し、10キロ、15キロが担いで帰れない客には、ここで注文を受けて、自宅に届ける。

 顔の見える関係になれば「こういった物が欲しい」との声も聞かれるだろう。それを次のJAに申し送りし、対応する。それが常設店舗の形をつくると考える。

 もう一つは、農業の裾野を広げていこう、との試みでもある。

 鳥取県は梨やスイカに代表されるよう、青果物の品質は全国トップレベル。それを維持するため、集荷場は良い物でないと受け付けない。しかし、これでは新規就農は難しくなる。

 関西に「売り場」があればどうか。集荷場から持ち帰らなくてもよい。市場流通の中で鳥取県は一級品を追求してきたが、新規参入しにくいという弱点もあった。曲がったキュウリも、消費者に理解してもらえれば販売できるのではないか。

 常設店舗ができることで、ルートができる、産地で作る人を増やせる。退職後に就農する人も出てこよう。一級品ではないかもしれないが、農家の入り口としてこういうやり方があってもよい。

■生産者に還元

 実証店舗初日の25日はJA鳥取中央が担当し、盛況だった。琴浦産ブロッコリー1個170円、湯梨浜(ゆりはま)産ホウレンソウ1袋190円、特産の大栄、倉吉スイカはカット売りもされた。

 「新鮮で安心できる」(66歳、飲食店経営)「1人暮らしなので、ネギ1本のように少しずつ売ってもらうと助かる」(69歳、主婦)。同団地自治会の堤登美子会長(85)は「住んでいる人は高齢者が多い。買い物が不自由だからいいのでないか」と歓迎した。

 県内JAの取り組みは、流通システムに対する挑戦ともいえる。ただし、その果実は生産者に還元しようとしている。