大阪発 羅針盤

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大阪府高齢者大学校の試み

2017年4月11日

超高齢社会のありよう提示 “社会への恩返し”促す

入学式に出席する高大事務局役員。写真上は講師の石黒氏が紹介したロボット画像(コラージュ)

 生涯学習の場を1年間提供するNPO法人大阪府高齢者大学校(高大)の入学式が8日に大阪市内で行われた。2017年度の受講生は2725人。前年度に比べて120人多く、健康長寿を楽しむ傾向が表れた格好だが、高大の運営サイドが受講生に期待する活動は「社会への恩返し」だ。実際に社会貢献を促す仕組みをつくった高大の試みは、超高齢社会のありようを提示している。

■顕彰制度

 「高大は民間で立ち上げたボランティア。日本の財政状況を考えると大事だ」。理事長の和田征士氏は入学式で高大開設の経緯に言及した。

 助成事業としてスタートした前身の大阪府老人大学が府の行政改革のあおりを受けて廃校になった後、老人大学修了生を中心にNPO法人を立ち上げ、高大を09年4月に開設した。その高大を修了後に運営事務局のスタッフやクラスの指導役として残り、後輩の受講生を支えるメンバーは約200人。いわば「ボランティア」の面々だ。

 17年度の講座は歴史、美術、文化、科学、パソコン、スポーツなど65科目。ボイストレーニング担当の講師は「10年前の声になる」、鉄道担当の講師は「鉄道旅行が楽しくなる」ように心掛けると受講生に伝えた。こうしたカリキュラムは健康、仲間づくりに役立つだけでなく、社会参加につながる効果もある。

 高大で学んだ朗読がきっかけとなり、視覚障害者のための音声化の活動を始めた池田市の男性をはじめ、タオル帽子を病院に贈る大阪市の女性、留学生を支援する池田市の女性の合計3人を、高大側は今年2月に表彰した。社会貢献する受講生や修了生を対象に創設した高大の顕彰制度であり、事務局が募ったところ36件の応募があったという。

■向上心

 高大のノウハウは、関西圏の他の生涯学習機関と共有しているほか、18日発刊予定の書籍『高齢者が動けば社会が変わる』を通して全国に発信する意向だ。和田氏は本書で「65歳以上の高齢者約3300万人の80%は元気なシニア」と解説し、シニア世代の活力に期待を寄せている。

 高大が入学式の特別講師として招いた著名人は、ロボット研究で知られる大阪大教授の石黒浩氏。「心は何かと考えさせられる。それが研究の面白さ。人間にとって大事な問題を考えてほしい。高大で本当の勉強をしてもらえれば」−。石黒氏のエールは、平均年齢69歳の受講生の向上心をくすぐっていた。