金井啓子の現代進行形

駅伝に感化されて“一年の計”

2017年1月5日

心身をリフレッシュする年に

 東京・大手町から神奈川県の芦ノ湖までを往復する箱根駅伝。私はほぼ毎年おせち料理やお雑煮をつつきながら何げなくテレビの画面で見ていたが、往復で200キロを超す長い距離をたった10人で途切れさせることなくタスキでつなぐというのは、本当に偉大なことだ。特にそれを強く思うようになったのは、10年ほど前に駅伝の経路の近くに住んだ時だった。

 1月2日の朝に箱根方面に向かう選手たちを沿道から応援したことが幾度かあった。最初に生で見た時に印象的だったのはその静けさである。もちろん沿道の人たちが応援する声は響いている。でも、その他に聞こえるのはアスファルトを小気味よく蹴ってゆく選手の足音と、かすかな息づかいだけ。しかも、選手の姿が見えるのは一瞬のみ。あっという間に走り去る。あの静けさ、力強さ、速さにはただ圧倒された。

 各選手が担当する距離はフルマラソンに比べれば短い。それでも、あの2日間に照準を合わせて調整してきたチームのメンバーの中から選ばれた10人の選手が、驚くほどのスピードで、わずかな例外を除いて担当区間を確実に走り切る。レースの総時間数は11時間余り。身体面でも精神面でもよほど鍛え抜かなければ達成できない偉業だ。

 今年もまた箱根駅伝で年が明けた。1年前の自分が打ち立てた新記録を更新する快走を見せる選手がいる一方で、脱水状態で苦しそうに走る選手もあったが、出場全20校と関東学生連合チームが無事に走り抜いた。

 今年の私はテレビ観戦だったのだが、「とても人間業とは思えない」といういつもの感想が湧き上がると同時に、「でも同じ人間なのだから似たようなことはできるかも」という気持ちもうっすら浮かんだ。

 私は大学まではスポーツを定期的にやっていたが、社会人になってからはそういう習慣がなくなったし、飽きっぽい性格だ。それでも、新年を迎えて何か新しいことをしたくなる“魔法”のようなものがかかったのかもしれない。少しだけ、いわゆるウオーキングらしきことをやってみた。普段は離れて住む弟はよく歩いており、最近は山登りまで始めたという。正月に会った彼がウオーキングをするのについて行ってみたのである。弟はほどよい“ペースメーカー”となってくれて、私は普段より速く歩いたがさほど疲れを感じなかった。と言っても、弟にとっては普段より遅めの速度だったらしいのだが。

 三日坊主になるかもしれない。でも、ならないものだってあるはずだ。「一年の計は元旦にあり」ともいう。箱根駅伝に触発されたのは元旦より後だが、まあいい。1年後の私はこの誓いを振り返ってどのように感じているのだろうと、少し心配しつつもとにかく新しいことを始めてみた。

 読者の皆さんは何か今年の誓いを立てたのだろうか。今年もどうぞよろしくお願いします。

 (近畿大学総合社会学部准教授)