金井啓子の現代進行形

「協力」という名の報道規制か

2017年4月6日

政府がテレビ局に圧力の疑い

 大阪市の学校法人「森友学園」の問題は、日に日にさまざまな材料が出てきて、どの部分が一番問題なのかわからないほど、収拾がつかない様相を呈してきた。中には「国会では他のことも論議すべきであって、この話ばかりではいけない」という意見もあるようだ。だが、この話ばかりを扱っているわけではないし、これで幕引きにしていい案件ではない。そうでなければ“第二、第三の森友”が生まれないとも限らない。森友学園の問題はこれだけが特異な存在ではなく、構造的には十分他にも起こりうるからである。

 そんな中で私がいま最も気になっているのは、つい先日のある報道である。籠池泰典前理事長は、2015年9月5日に安倍昭恵首相夫人が講演する直前に、夫人から100万円の寄付を受け取ったと主張している。講演の様子をテレビ大阪が収録しており、系列局のテレビ東京が今年2月のニュース番組で放映した。籠池氏と昭恵夫人が「2人きりの状態」となった際に寄付金の受け渡しがあったという籠池氏の偽証を立証したい政府が、自民党の衆議院議員を通じてテレビ大阪に協力を要請するために接触を図ったとみられるというのだ。講演直前の籠池氏や昭恵夫人の様子を映した動画や、当日の2人を追っていた記者の証言を手に入れて、「2人きり」にはならなかったことを証明するのが目的らしい。

 この報道がもし本当だとすれば非常に深刻な問題である。時の政府がこのような“協力”を求めて報道機関に証言を要請するというのは、“圧力”と受け取られてもおかしくない。報道機関が取材で得た情報を報道目的以外で第三者に公表したりすることは、報道の倫理の観点から言って、あってはならないこととされている。私が勤務していたロイターでも、インタビュー直後に「どんな記事になるのか見せてほしい」と依頼されることがあったが、相手に絶対に記事を見せてはならないと禁じられていた。相手に見せた場合、その素材を広告・宣伝など報道以外の目的に使われたり、「記事を取り消せ」などと圧力を受けることがあるからだ。

 まして、既にこのコラムでも書いているように、寄付金の授受があったとされる両者のうち片方だけを証人喚問に呼び、もう一方を呼ぶことすらしないうちから、第三者に頼ろうとするのは姑息(こそく)であり、その相手がよりによって報道機関であるとは、政府には顔を洗って出直してもらいたい。よほど手詰まりなのだろうか。

 なお今回の報道によると、テレビ大阪側は、政府からの協力要請の有無や要請への対応について尋ねられると、「報道していることがすべてです」とのみ答えたのだという。報道の自由を自ら放棄するような愚挙はなんとしても犯さないでほしいと願う私の声が、テレビ大阪をはじめとする報道機関にぜひ届いてほしい。

 (近畿大学総合社会学部教授)