金井啓子の現代進行形

政治家はロボットなのか?

2017年8月10日

都民Fの大半が調査に答えず

 小池百合子東京都知事が立ち上げた地域政党「都民ファーストの会」(以下、都民ファースト)に注目が集まっている。ただし、良い意味での注目ではない。「あれ?」と、ちょっと首をかしげたくなるような注目なのだ。

 都民ファーストは7月の東京都議選で圧勝し、自民党を抜いて都議会第一党に躍り出た。当選した55人の都議の大半は新人だが、長らく自民党の支配に置かれていた都議会を改革してもらいたいと、多くの都民が都民ファーストに票を投じたはずだ。都議たちも、その期待に応える覚悟はあっただろう。

 ところで、8月6日の毎日新聞によると、同紙が安倍政権の評価や憲法改正の賛否について都議127人にアンケートをしたところ、都民ファーストだけがほぼ全員、無回答。しかも、その理由が「都政に専念するため」と、どの都議も判で押したような同じ回答を寄せたのだという。

 毎日新聞によると、いずれも都民ファースト本部から示された模範回答を丸写ししたらしく、「自由な発言が許されない雰囲気がある」といった所属都議たちの声も紹介していた。

 政治家という仕事は独立性の高いものだと私は思っていた。たとえ自民党や民進党、公明党や共産党などの政党に属していても、一人一人の政治家は自身の信念に従って政治を行い、夢や理想を語る仕事だと思ってきた。

 政治家は選挙を戦い、有権者から1票を投じられて当選したのだ。有権者の期待に応えるためにも、個々の政治家はしっかりとした政治理念を持ち、自らの言葉で政治を語る必要がある。

 もちろん政党に属していれば、その政党が掲げる公約や目標を達成するため、政治家個人の発言や思いに制限がかけられることはあるだろう。だからといって、政党が所属する政治家の口をふさいで良いものではない。

 政治は数が勝負なのは確かだ。だからといって政治家が自由に発言することとは矛盾しない。なぜなら、自由な討論や批判によって政策も磨かれるからだ。民主主義社会にとって政治家は独立性のある仕事だからこそ、自由な発言を担保しなければならない。上の言うがまま個々の政治家が押し黙ったままでは独裁国家と変わらない。

 都民ファーストはまだヨチヨチ歩きの政党とはいえ、これでは先が思いやられる。指令塔は同党の本部。都議は本部の指令に反応するだけのマシンにすぎず、まるでロボットである。このたび「日本ファーストの会」が設立され、国政進出を考えているようだが、国政でもロボットを大量生産するようでは国民もたまったものではない。

 都民はロボットに政治を任せたのではない。独立した政治家に託したことを都民ファーストも忘れないでほしい。

 (近畿大学総合社会学部教授)